第539話 姉妹のような仲の良さ。


 呼吸ができなくなるほどの衝撃が背中に突き抜けていく。二、三歩ふらつきながらもどうにか倒れずにリュカを支えきった。腹に頭を突き刺したままの体勢で手を伸ばしてくるのをどうやって抱き返したものか。


「元気そうでなによりだ」

「ユーマは元気だったデスカ!?」

「うん」


 俺は短く頷きリュカの背中側から両腕を回した。ちょうど腹のあたりで両手を繋いでホールドし「えいやっ」とリュカの小さな体を引っこ抜いてやる。


「わわっ」


 驚きの声を上げるリュカはしかし、持ち上げられても暴れたりしない。されるがままで俺の肩にかつがれた。その後で器用に体勢を変えて肩車の姿勢で収まった。頭を掴まれる。自由だな。


「仕事には慣れたか? 順調か?」

「はいデスヨ!」


 いい返事。


「あ! ノヴァデス!?」

「ふふっ、やっと気づいてくれたな」

「ノヴァ!」


 リュカは俺の肩から跳躍しノヴァへ飛び移った。ムササビかなんかかこの娘は。そしてふたりは楽しそうにイチャイチャしはじめた。種族は違うが姉妹のようだ。仲が良くて俺も嬉しい気持ちになる。


「俺とノヴァも宿ホテルに帰りたいんだが、馬車の席は空いてるか?」

「だいじょぶデスヨ!」

「ん。じゃあ頼む」

「途中で“風”様のところに寄るデス?」


 ……ウェントリアスか。

 俺が留守の間、色々お願いしてたのもあるし、スルーするわけにはいかないか。


「そうだな。祠の手前で俺だけ降ろしてくれ」

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