第511話 飛梅

 普通に気後れするわ!

「ヤツ」め、無茶な注文しやがって。

 だいたい高杉晋作with菅原道真ってなんだそりゃ。


 は「ヤツ」に身体の制御コントロールを奪われたままドン引きしていた。長州の軍神だけでも手に負えないと思っていたのに、菅原道真が取り憑いてるとか盛り過ぎにもほどがある。


 ――ふと疑問に思ったことがある。


 高杉が突然使者として姿を現したのも、その後誰の目にも触れずに姿を消したのも、菅原道真の権能ちからの一端なのではないか、と。


「ヤツ」は高杉を抑え込むために絶え間なく死者を召喚し続けている。菅原道真の手――だかなんだか――に阻まれて死者の群れの攻撃は全く届いておらず、高杉は余裕の表情だ。


 余裕? あれはどういう表情カオなんだ? 攻撃そのものは当たっていないが高杉だって半ば身動きを封じられているようなものなのに。


 疑問は疑惑に変わり、突如、疑惑が現実のものとなった。

 高杉の姿が、消えたのだ。


「なんじゃとっ!?」


 ――後ろだミラベル!


 俺の胸中で上げた叫びに「ヤツ」は瞬時に反応した。自分の周囲に骸骨兵スケルトンウォリアーを大量に召喚し防御を固めつつ身を隠した。


 空間を跳躍したとしか思えない高杉は宙から舞い降り不可視の手を叩きつけてきた。骸骨兵がバラバラになって砕け散るが、ミラベルはどうにか無事だった。


「やるね。飛梅とびうめを見切られるとは思わなかったよ」


 飛梅!

 やっぱり菅原道真の故事か!

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