第494話 異能


 幕末の英傑である高杉ならノヴァがやってみせたようなことも可能なのではないか。だが、この天幕の外にいる全員に対して、死角をついてそこへ滑り込むことは容易ではないようにも思う。


「ノヴァは今俺にやったヤツ、この場の全員に同時にやれるか?」

「むむ」


 俺の問い掛けを吟味するように唸って、しばし瞑目。そののちノヴァは首を横に振った。


「無理ですね。三人同時くらいが限界かと」

「それでも十分すごいけどな」


 ノヴァのやり方じゃないってことか。

 考え方を変える必要がありそうだ。


「ユーマ殿、突然どうしました? 剣でも学びたくなったのですか?」

「違うそうじゃない」

「違いましたか。残念です……」

 

 どうしてか残念がるノヴァはおいておくとして。

 剣の術理とかいうレベルを超越した力を高杉が持っている、としておくべきだろう。たとえば、姿を消すだとか、幻覚を見せるだとか。そんな魔法みたいな能力。


 考えるだけでうんざりしてくるが、相手が相手なのだ。

 注意しすぎてしすぎることはない。

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