第478話 空と魔剣と皇帝と
「空からの攻撃がこれほど有効だとは思いませんでした」
とノヴァは率直な感想を述べた。
王国最強の赤の勇者ですら制空権の重要性をはじめて知るレベル。
まあ、航空兵器のない――ないよな?――異世界に「制空権」や「航空有利」なんて概念はそもそも存在し得ない。
「反撃を受けることもなく、一方的に帝国軍を焼き払いましたわ」
エリザヴェートは満足そうに微笑んでいるが、目は全く笑っていなかった。怖い。彼女の帝国に対する憎悪は根深いものがあるから致し方ない。バネッサと同じかそれ以上だ。
魔剣使いの三人中二人が帝国憎しの気持ちで力を使っているのはかなりのリスクだ。今はいいが、この先もこのリスクを抱え続けていくのは正直辛い。
「ただ――」
エリザヴェートは目を細め、笑みを消した。
「――壊乱する帝国軍にあって、一箇所だけ恐ろしく統制の取れた集団がありました」
「上級士官が多い集団か。指揮官クラスか」
「それ以上かと、ユーマ殿」
ノヴァが固い声で言った。
それ以上?
「指揮官クラスより上となれば……、皇帝か」
「はい。あれはリーヨーン帝国の皇帝でしょう。出征しているという噂は本当だったようです」
「見たのか」
「はい。この目でしかと。アレは只者ではありませんでした」
ノヴァは皇帝の姿を思い出し身震いし、そんな自分を恥じるように表情を引き締めたのだった。
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