第476話 もうひとりの

「あー……」


 俺は口元に手を当てて呻いた。

 考えたくはないが、もし腑に落ちることは幾つかある。いや、でも。


「どうかしたか?」

「いえ、お気になさらず」

「顔色が悪いぞ貴様。大丈夫か?」


 イグナイトが狼狽し気遣うほど、今の俺の顔色は悪いらしかった。

 嫌な汗が頬を伝っているのは自覚しているが、そんなにか……。


 さっき思い当たった嫌な予感。

 言葉にするのも憚られるような予想。


 リーヨーン帝国の皇帝は、俺と同じ転生者だ。


 それは今や確信に近い。

 他の可能性が何も思いつかないほど俺の思考を埋め尽くしていた。

 

「ちょっと眩暈めまいがしまして……」

「少し休め。貴様に倒れられては困る」

「感謝します。お言葉に甘えます」


 俺以外の転生者――

 そいつは銃を持ちこみ、銃兵を組織し、異世界に覇を唱えようとしている。


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