第475話 皇帝の素性について

「重大事件か」


 イグナイトはふむ、と顎に手をやりしばし黙考。

 そして、


「元々征服国家だったリーヨーン帝国だが、侵略の速度が大きく上がった。結果として大陸北部を完全に征服したのだ」


 と言った。


「新兵科である銃兵を採用してからですよね。侵略が加速したのは」

「そうだろうな」

「銃兵を採用する以前に、帝国に大きな変化はありましたか?」

「皇帝が代替わりしている」


 代替わり? これか? いや、どうだろうか。前の皇帝が死んだなら代替わりは当たり前だ。


「代替わりということは、直系の王子が即位したんですか?」

「違う」


 ん? 違う?



 やっぱりこれだ。

 この新しい皇帝が原因に違いない。たぶん。きっと。おそらくは。


「現皇帝はどんな人物です? 名前は?」

「名は知らん。常識に囚われない発想の持ち主らしい。ちょうど貴様のようにな」

「俺のように……?」


 おいおい。まさか。

 ひどく嫌な、だが確信じみた予感が頭をよぎった。

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