第450話 覆せない!
千体の骸骨兵がいっぺんに動き出す。
カタカタ、ガチャガチャいう骨の音。土を掘り返すザクザクという音。物言わぬ骸骨たちの奏でる音色は雑然としながらも心地よい拍子であった。
――のだが、
「騒がしいのう」
王国の兵どもがぎゃあぎゃあ言うておる。
突然現れた骸骨に肝を潰しておるのはまあよいとして、骸骨が陣地構築をしていることに文句をほざいとるのはどういう了見か。おのれらがやらんから儂に鉢が回ってきたのであろうに。
「おい貴様、何をやっておるか!」
監督官らしき男が突っかかってきおった。
「何、と言われてものう。防衛線の構築をな」
「我々の仕事だ」
「お主らの仕事が遅々として進まんので手伝いをせよ、と言われたのじゃよ」
「誰がそんなことを言ったのだ!」
にたり、と儂は嗤った。
「イグナイト殿下じゃが?」
「なっ」
いい顔をしよる。儂は笑みを一層深くした。
「儂に文句があるなら第二王位継承権者殿に申し出ることじゃな」
儂は王族からの直々の命令に従っておるわけで、これを覆したければ直訴しかあるまい。
(そんな暇があるなら手を動かしてくれって話だ)
ユーマがぼやくのも詮無いことではあるかの。
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