第440話 不動の魔剣使い


「さて」


 俺はずぶり、と虚空に両手を突っ込んだ。

 指先にはいつもの骨刀の感触。


 遠慮も手加減も要らないだろう。こっちだってされてないのだから。


 左右の手に一本ずつ握った骨刀を投擲する。死霊術師の力が上乗せされて速度を増したそれらがバネッサに急行。直撃するかと思われたが、バネッサの眼前に分厚い水の壁が立ち上がった。


 俺は舌打ちひとつして、右手を振り上げた。


 骨刀の軌道が変わる。直線的な投射軌道から有り得ない方向に二本の骨刀は弧を描き、水の壁を避ける。左右からの挟撃。これは当たったと思ったが、


「――そんなに甘くはないか」


 水の槍が回避不可能な数で殺到し、骨刀は地面に縫い留められた。

 なお、バネッサはいまだに一歩も動いていない。


 うん、普通に強いな。俺より全然戦闘に向いてるぞこの人。

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