第433話 FC加盟一号店交渉

「というわけで、加盟店一号店になってもらえないだろうか?」


 俺は以前世話になった小さな宿屋を訪れ、姉妹に商談を持ちかけていた。


 姉のナーシャは目が泳いでいた。妹のマーシャはそんな姉と俺の間を行ったり来たりしている。


「あの、えっと」


 ナーシャの動揺もむべなるかな、といったところだ。なにせ俺の隣には王国の最高権力者ヴィクトールが鎮座しているのだから、落ち着けという方が無理だろう。


「今すぐ回答が欲しいわけじゃない。さっき説明した通り、加盟すると運営に関する縛りは増えるし手数料だって発生する」


 俺はFCビジネスのデメリットも包み隠さず説明していた。ここを疎かにしては真っ当な取引とは言えない。


「一号店ということで、ベッド等の備品に関しては国庫から負担する用意がある。この件は我が国と彼、ユーマ•サナダとの共同事業でもあるのだよ」


 ヴィクトールは安心させるように笑いかけたが、笑みを返したのはマーシャだけだった。


「あの、質問することをお許しいただけますか?」


 強張った表情でナーシャが言った。ヴィクトールを連れてきたのは失敗だったかな、と俺は少々後悔していた。



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