第367話 さらば王都。でもまた来ます(来たくはない)


王都をぐるりと囲う城壁。

その正門の前に、馬車が一台あった。

持ち主は俺の姿を認めるとブンブンと手を振って見せた。

今にも駆け寄ってきそうな勢いに俺は苦笑する。


片手で「来なくていい」と静止する仕草ジェスチャー


「おはようございやす、旦那!」

「おはよう。早いなブルーノ」

「そりゃあもう。旦那からの依頼ですから気合いいれやした!」


 宿屋の姉妹といいこの商人といい、こういう連中ばっかりだったら異世界こっちでの生活も楽なんだが、良い人間がいるということは悪い人間もいるわけで、そうして得てして悪い人間の方が力を持っていたりするのだ。


「やれやれだな」

「なにがです?」

「なんでもない。――すぐに発てるか?」

「勿論でさあ!」

「じゃ、よろしく頼む」


 御者台に乗ったブルーノが隣を勧めてくれるので、俺も御者台に腰掛けた。

 馬が一声嘶き、ゆっくりと馬車が動き出す。

 俺はちらりと王都の威容を振り返り、こう告げた。


「そんじゃさいなら王都。また来るわ。……嫌だけどな」


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