第352話 内憂外患、なんて言葉では済まない現状。


「まず内政」

 

 と、ヴィクトールは右手の人差し指を立てて見せた。

 それを受けて、イグナイトが続ける。


「先日の帝国の攻勢により、王都は甚大な被害を受けた。具体的には国境守備隊は人員の過半を喪失し、防衛陣地も崩壊している」

「ま、そうだろうな」

「王都と周辺の住民からは不安と不満の声が上がっている。貴族からも戦闘損害に対する補填の話が出ているのが現状だが――、恥ずかしながら王宮の国庫にはそこまでの余裕はない」


 なるほどね。

 

「次いで外交」


 ヴィクトールが人差し指に続いて中指を立てた。Vサインだな。


「南の小国連合はひとまず捨て置くとして、北だ。リーヨーン帝国との関係性をどうにかする必要がある」


 どうにかできると思ってるのだろうか。

 帝国の脅威に晒されて、国民の不満は弥増いやますばかり。

 ロクでもない話だ。

 やっぱり聞くんじゃあなかったな。


「状況は理解した。だが、一介の宿屋の主人には関係の無い話じゃあないか?」

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