第十七章

第339話 探偵役には相棒がつきもの

 シュトルムガルド王国の王宮、その謁見の間はどこまでも寒々しかった。

 広い空間に居るのはたったの五人。

 

 王族が三名。

 ヴィクトール、イグナイト、エリザヴェート。

 そして赤の勇者ノヴァ。

 で、俺だ。


(儂もおるぞ!)


 はいはい。俺の心には稀代の死霊術師ミラベル・アンクヤードが巣食っている。


 真夜中とはいえ、謁見の間にたったこれだけじゃあ広すぎるというものである。

 こんな深夜に何をしているかというと、推理の披露。

 ミステリ小説なんかで探偵役が容疑者を集めてやるアレを、俺がやっている。


 探偵役ねえ。

 俺はただの宿屋ホテルの支配人なんだが……。


(堂に入ったものじゃったがの)


 はあ。そりゃどうも。


 でまあ、俺の推理を受けて犯人――すなわちエリザヴェート・フロランス・シュトルムガルドは犯行を認めた。俺が結局わからなかった動機について問うと、長い沈黙の果てに「愛するもののためですわ」と答え、10年前の帝国の侵略について言及すると、不意に黙り込んだ。



 愛国心の発露が親殺しの動機ってのは、答えを聞いてもやっぱり意味がわからん。


(ユーマはアホじゃのう。あの姫は国を愛しとるとは言うてはおらんじゃろ)


 ――ん?

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