【幕間】

赤の勇者は王女の考えがわからない

 私――ノヴァ・ステルファンは、幼い時からエリザヴェート様の御傍にずっといさせていただいた。ずっとエリザヴェート様のことを見ていたと思っていた。けれど、今、謁見の間にいらっしゃるお姿は私の知るエリザヴェート様とはどこか違って見えた。


 ユーマ殿が話している間、エリザヴェート様は反論はすれど、心ここにあらずといった雰囲気だった。


 何をお考えになっているのかなど、私如きには想像もできない。


「エリザヴェート殿下が犯人だってことはわかった。けど、ひとつわからないことがある」


 と、ユーマ殿が言った。

 ひとつだけ。

 私には何もかもが分からないけれど。


「なんでしょうか? 答えられるものであれば、お答えしますわよ、名探偵さん」


 エリザヴェート様の薄い笑みは酷薄さすら感じられた。


「動機だ。どうして十年もかけて、王位の簒奪を計画した? 貴女は権力に固執するタイプでも玉座からの景色を楽しむタイプでもないだろう」


 その問いに、エリザヴェート様は目を伏せ長く黙っておられた。

 

「――愛するもののためですわ」


 そう仰られた後、一度、私の方をご覧になられた。

 私に微笑みかけられたのは気のせいだったろうか。

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