第307話 罪状アドミッション


「でまあ、俺の骸骨兵スケルトンウォリアーは逃げた連中のひとりをどうにかこうにか捕まえたわけだ」


 やけに装備のいい野盗は、骸骨兵に囲まれて顔を真っ青にして全てを白状した。


「曰く『身なりの良い貴族風の女に目印のつけた馬車を襲うように依頼された』ってな」


 野盗は拘束してある。

 物証を示せどうしてもと言うなら連れてきてもいい。


「本当ですか、ユーマ殿」

「この期に及んで俺が嘘を言うとでも思ってるのか、お前は」

「い、いいえ。ですが、何故エリザ様がそのような」


 簡単だ。


「その身を危険に晒してでも、自分を容疑者から外したかったんだろうよ。自分の身はノヴァが護ってくれる。俺のことはどうでもいいと思っていたはずだ。最悪死んでしまっても問題ない、と」


 そういう心算つもりだったんだろうが、俺の――というか「ヤツ」の力を見誤っていたな。


 俺に言葉と事実を突きつけられ、エリザヴェートは小さく嘆息した。


「何もかも掌中にあり、ということですのね」


 力ない冷笑。

 今までの必死の演技は何処へやら。

 淡々とした表情で頷いた。


「ユーマ様の真の実力を存じておりましたらあんな脅迫めいた依頼をしてまで王都へお連れしませんでしたのに。であれば事が露見することもなかったかも」

「俺はノヴァを退けているんだ。その時点で想定ができただろうに」

「……武力についてはある程度は。結果は想定以上でしたけれど」


 エリザヴェートは今まで一度も見せたことの無い負の感情が混ざり合った視線で、俺をめ付けてきた。憤怒、悲哀、嫉妬、畏怖。綯い交ぜになったその感情の正体はわからない。


「ユーマ様の洞察力に関しては全くの想定外でしたわ」


 そうかい。


「――で、認めたってことでいいんだな?」

「はい。一連の暗殺者騒動は私の狂言ですわ」

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