第302話 姫殿下オブジェクション

「ユーマ様、よろしいですか?」


 控えめに、だがはっきりとした口調でエリザヴェートは言った。


「反論しても、よろしいですか?」

「うむ、構わぬ。聞こうではないか」

「……ありがとうございます」


 エリザヴェートはこちらに小さく会釈をして、ふたりの兄に対してもちらりと目礼をした。兄達は無言。


「ユーマ様の御言葉には根拠がございません。全てユーマ様の頭の中で組み上げられたお話ではありませんか?」


 まあ、推理だからな。

 頭の中で考えただけといえばそうだが、


死者審問インクエストで騎士の魂が語ったことはなんとする?」

!」

「くっくっく」


 ふふっ。

 俺もちょっと笑ってしまった。

 でっちあげときたか。

 そうかいそうかい。

 ならしょうがない。


「吐いた唾、飲み込むでないぞ。エリザヴェートよ、もう一度、今したのと同じ発言をしてみよ――」


 愉悦満面で「ヤツ」が謁見の間に招き入れたのは、


「――今度は此奴こやつの前でなぁ」


 赤の勇者ノヴァだった。

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