第286話 商人の勘違い


「なっ!?」


 急に手を握られて変な声が出てしまった。

 リュカはというと、いつもと変わらない笑顔でアタシを見上げている。

 慰めならいらねえぞ、などと思っていると、


「コレ! クラリッサにあげるデス!」


 何やら手に握らせてきた。妙な手触り。木の感触。


「こいつは――」


 ――さっきの露店で買ったペンダントの片割れだった。


「こいつはオッサンかナターシャにやるんじゃあないのかよ」

「ジブン、そんなこと言ってないデスヨ?」

 

 あれ?


「……」

「うにゅ?」


 アタシは記憶を反芻する。


「……」


 あー、うん。たしかに。言ってねえな。

 アタシが勝手にそう思ってただけだわ。

 思い込み。いや、勘違いか。


「あのよリュカ、聞いていいか?」

「はいデスヨ?」

「……なんで、なんでアタシなんかにこいつをくれるんだ?」



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