第285話 商人は悔しさで胸を焦がす
ジイさんの露店を後にしたアタシとリュカは帰路についた。
リュカはしきりにアタシのことを褒めてくる。
「さっきのすごかったデス! ジブンはわかんないことばっかだったデスケド! クラリッサすごいデス!」
「ん。ありがとな」
おべっかとかじゃなく本当に感心してくれてるのは見りゃわかる。
けれどアタシはさっきの交渉には全然全く納得いっていないのだった。
勝ったつもりになっていた。
その実、上をいかれていた。
普通なら毟られていたはず。
ジイさんは「試し」とか言っていたが、試されてる時点で格下扱いだ。
悔しい。
悔しい!
商人同士の交渉ですらなかった。
そう思ってたのはアタシだけだった。
ジイさんからしてみれば指導に過ぎなかった。
馬鹿にされたわけじゃない。ジイさんがアタシのことを見込みがあると思ってくれたのも分かる。それでも、それでもこの悔しさだけはどうしようもない。
「クラリッサ」
内心で荒れ狂うアタシの情動を知ってか知らずか、リュカがそっと手を握ってきたのだった。
「……っ!」
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