第262話 獣人は尾撃かます行動

 薄目を開けたアタシの視界の端をリュカらしき人影が通り抜けた。


 影はアタシとオッサンの間にするりと割って入り、跳んだ。足先がアタシの目の前に来るくらいのものすごい跳躍力。


 宙空のリュカはぎゅるっと回転した。

 猛烈な勢いのついたリュカの尻尾がオッサンの顔面を強打。


「ふぐぁっ!?」


 顔を押さえてのけぞるオッサンを尻目にリュカはしなやかに着地。すぐさまアタシの手を取って、


「逃げるデスヨ!」


 走り出す。

 ざらりとした小さなてのひらに掴まれて、思った以上に強い力で引っぱられて、アタシは市場の雑踏に紛れ込んだのだった。

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