第259話 商人の目的地を前に、獣人は庭駆け回る勢い
アタシとリュカは、閉塞感しかない目抜き通りを抜け、そこからもうしばら歩く。すると、広々とした土地が、目と耳を埋め尽くした。
多くの露店。
無数の雑踏。
怒号と歓声。
集落の入り口からここまでの無味乾燥な雰囲気とは真逆の光景。
「わあ! すごいデス! いろいろいっぱいデス!!」
ぴょんぴょん跳ねたりそわそわしたりあたりをきょろきょろ見回したり。全身で感動を表現するリュカに、アタシは思わず笑ってしまう。アタシもはじめてココに連れてきてもらった時は似たような感じだったな。そういえば。
「そうだな、この辺じゃここより大きい市場はないよ。シュトルムガルド王国だったら王都か港町くらいじゃないかな。いや、港町も規模はここまでじゃないか。売上額はあっちのが上だろうけど」
ココが今回のアタシの目的地――露天市場だ。
「すごいデス! クラリッサはなんでも知ってるデス!?」
「んなこたぁねえよ」
アタシなんて何も
知らないことばかりだ。
たとえば――
「おいこらガキィ!
市場に入ろうとした時に、すれ違い、微かに肩が触れた中年の男が振り返るなり因縁をつけてくる。顔は赤く、呂律も怪しい。酔っ払いだ。まだ日も高いというのに。
――帝国における獣人差別について、アタシはきちんと理解できていなかった。くそっ。
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