第252話 商人は護衛の雇用関係について考える

 アタシのまあまあ失礼な問いかけに、獣耳の女の子リュカは首を傾げた。


「ジブン、買われてないデスヨ?」


 微妙に違うニュアンスで伝わったな今。

 けど、そんなことには気付かずに、


「ジブンとユーマはコヨウカンケイにあるデスヨ!」


 と言った。


「雇用関係?」


 って言ったよな、今。

 人間オッサン獣人リュカが?


「ユーマはいつもそう言ってますデス! ユーマがジブンを雇って、雇われたジブンはユーマの宿で働いているデスヨ!」


 王国での獣人の扱いはあまりよくない。

 帝国ほど悪くもないが、そんな風にまともに扱ってくれるケースは稀だ。


「良かった。飼われてるわけでも買われたわけでもないんだね」

「ユーマがそんなことしないの、クラリッサもわかってるデスヨ?」


 ニコニコしながら獣耳の女の子リュカは言った。

 ちっ。気に入らない。

 知った風に言いやがって。

 なんでアタシがあのオッサンのことをそこまで信用してると思い込める?


 でも言い返せなかった。

 なので、アタシは代わりに別の文句を言ってやる。


「クラリッサさん、だろ。ちゃんとさん付けて呼べよ」

「さん?」

「そうだよ。年上には敬意を払いな。あと、アタシはアンタの雇用主ユーマから護衛アンタを押し付けられてる立場なんだから。わかる?」


 獣耳の女の子リュカはハテナ顔で、


「よくわかんないデス」


 と首をさっきよりも深い角度で傾げた。

 わかんないかー。

 あのオッサン、この子にどういう教育してるんだろうか。

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