第248話 獣耳娘の満点回答

 チビ女アイは勝手に話を進めていく。


「リュカ、いざという時――たとえば危険が迫った時にはどうします?」

「このおねーさんだけ抱えて逃げるデス!」


 チビ女は表情を一切変えずに獣耳の女の子リュカの頭を撫でて、


「よくできました。正解です。クッキーをあげましょう」

「やったデスヨ!」


 とかやっている。アタシはなんでこんなのを見させられてんだ?


「金銭はいくらでも後で取り返せますが、命を奪われてはどうしようもありません。けれどリュカ、クラリッサの命と同じくリュカ自身の命も大事にするように。ユーマ様を悲しませないために」

「ユーマが悲しいのは嫌デスヨ!」

「……そうですね。私もです」


 ちっ。


「しゃーねーな。じゃあアタシがそいつのお守りをすればいいんだな?」


 チビ女はアタシの言葉を無視して、馬鹿でかい犬デュワンゴをひと撫で、


「それではシュラ。ふたりを頼みます」

「ばうっ」


 このガキ、いつか締めてやる……!


「あのー、アイさん」


 と、ずっと黙っていた金髪の女がそっと手を挙げた。


「なんでしょうナターシャさん」

「リュカの抜けたぶんのシフト、どうするんですか?」


 一瞬の間。


「――ナターシャさんがいつもの三割増しで働いてください」

「うえっ」

「残りの七割は私が担保します。これで問題ないでしょう」

「りょ、了解です」


 すげーなチビ女。

 果たしてアタシにこいつを締められる日が来るんだろうか……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る