第240話  悪魔のごとく振舞う気位の高い慈愛もある、などとは思えない

「――我々が帝国を打ち倒すか、我々が帝国に滅ぼされるか。ユーマ・サナダ。君にはどうか結果を見届けていただきたいですね」


 物騒この上ない発言をするヴィクトールの声音はしかし、実に楽しそうな響きをもって、謁見の間に響き渡った。


 こいつ……!

 まさかこの状況を楽しんでやがるのか?

 亡国の危機を。国民全員の命の掛かった大博打を。

 国家の代表として、国の、民の行く末を案じたりしないのか?

 それとも、この悪魔のような振る舞いの中に、慈愛の心があるとでも言うのか?


 なんにしろ、ヴィクトールは普通じゃない。変人か狂人の類だ……!


 だが、もう俺に選択肢なんて残されていない。

 やるか、やらないか、なんて状況じゃないのだ。


 やるか。

 もっと上手くやるか。

 そのどちらかだ。


「いいだろう。だが最大限、俺の意向は酌んでもらうぞ」

「勿論ですよ、救国の大英雄」


 ……いちいちカンさわるやつだ。


「まずその呼び方をやめろ。俺は、英雄なんかじゃない」

「これは失礼しましたね。では、ユーマ殿、と」

「ああ、それでいい」


 ちっともよくないがな!

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