第192話 赤の勇者の人物評

 赤の勇者殿にお迎えにきていただき、ようやく俺の身元は保証され無事に王宮に入ることができた。やれやれだ。


「ノヴァ、ちゃんと衛兵に話を通しておいておけ。そう言ったよな?」

「すまん」

「笑顔で謝罪するな。誠意が見えんぞ」


 中で待っていたエリザヴェートを先頭に無駄に広い廊下を往く俺たち。


「ふふっ」


 エリザヴェートまで笑っている。

 くそっ。笑いものにされるために来たんじゃないんだぞ。

 だが、まあいい。


「――俺たちはどこへ向かってるんだ?」

「謁見の間ですわ。お兄様方にご紹介させていただきたく」


「お兄様ね」


 第一、第二継承権者か。

 そのどちらかが、妹であるエリザヴェートを殺そうと刺客を放った。

 ……とも言い切れないか。

 側近が暴発して先走ったとかもありうる。

 会ってみないとなんとも言えないな。


「ノヴァよ、さっきの不手際の分を早速返してもらおうか」

「な、なんだ」

「そんなに身構えなくていい。質問に答えてくれればいいだけだよ」

「質問?」

「赤の勇者殿から見て、エリザの兄上たちはどんな人物だ?」

「んなっ!」


 絶句して足を止めるノヴァ。

 俺は口の端を歪め、目を細めた。


「臣下が王族を評するなど、とか思ってるんだろうが、正直に答えてくれよ。エリザの生死に関わるんでな」


 くっ、と下唇を噛んで、ノヴァはしばし瞑目。

 ややあって口を開いた。


「……第一王子のヴィクトール様は文武に優れ聡明なお方であられる」


 ノヴァにそこまで言わせるとは、第一王子は大した出来物できぶつだな。


「第二王子のイグナイト様は、その――」


 ノヴァが言い淀む。

 言葉を選びかねているといった風情だ。

 つまりは、そういうことか。


「私が、どうかしたかね?」


 声の方に視線をやると、大層ご立派な服を着た男が立っていた。

 おやおや。質疑の途中で第二王子ご本人のお目見えか。

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