第178話 夜の帳が下りた後
電灯の無いこの世界の夜の闇は暗く、深く、厚い。
光源は枯れ木を集めて熾した焚き火のみ。
焚き火の明かりから離れ過ぎると、自分が今どこにいるのかさえわからなくなりそうだ。僅かな風の音や獣の遠吠えが更に闇への畏れを加速させる。
そんな状況にあっても、
「すぅ……」
エリザヴェートはノヴァにもたれかかって静かな寝息を立てていた。心臓が強いというべきか、図太いというべきか。とは言え俺も若干眠いわけだが、呑気に眠るわけにもいかないわけで。
「夜の見張りは――
「申し訳ない」
エリザヴェートに半ば抱き枕状態にされているノヴァはすまなそうにフードで隠した頭を下げた。
「いいよ」
あまりよくないが、そう返す他ない。
「あっしは大丈夫ですぜ!」
やたらハイテンションのブルーノには悪いが、彼には任せられない。相手が暗殺者だったりした場合、確定で秒殺アンド俺たちもデンジャラスタイムに突入してしまうため。となると――
「俺が夜明かしするしかない、か……」
自分で言葉にしてげんなりしてしまう。
三十過ぎて徹夜は厳しい。
学生時代とは違う。違うのだ。
夜勤もぼちぼち辛くなってきたお年頃である。
(ユーマよ)
「ヤツ」が胸の
なんだ?
(儂が見張っておいてやるから今日の所はぐっすり眠っておれ)
マジか。
って、なんか余計なことを――
(企んではおらぬ。余計なことはせん。簡易な結界を張る程度のことよ)
……ん。
じゃあ、任すわ。
眠気には勝てん。
今日のところは任せる。
(よかろう。良い悪夢を、ユーマ)
ガクン、といつものように視界が切り変わるより早く、俺は泥に沈むが如く眠りに落ちた。
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