第210話 騎士階級と第二王子の関係性

 騎士たちは、こちらを蔑むような嫌な笑い方をしてきた。

 侮蔑はさておき、想定していたリアクションとは異なるのはマズい気がする。


「王女殿下の次は第一王子殿下、ときたか」


 やっぱりだ。

 俺がなんか間違えったっぽい。


「我々から情報を引き出したくば、イグナイト様のご認可を得てくるが良い」

「イグナイト殿下の?」


 なるほど?

 ここで第二王子の名前が出てくるのか。

 だが、イグナイトは絶対に俺にそんな認可モノをくれないだろうな、と思った。俺もあの男に借りを作りたくはない。


「我々騎士一同が剣を捧げるのは国王なれど、イグナイト殿下に誓いを立てることもやぶさかではない」


 主語がでかい。騎士一同ってアンタ。酔った勢いにしても大言すぎやしないか。

 だが、他のふたりもしきりに頷き同意していて諫める気配はない。


 イグナイトは騎士階級を支持基盤として掌握しているってことで間違いなさそうだ。でも、イグナイトだぞ? いいのかアンタら。


「騎士様方に質問なんだけど、イグナイト殿下がヴィクトール殿下よりも抜きんでている部分って……、どこ?」


「あるのか?」と言いそうになったのを「どこ?」と言い換えできて良かった。


「イグナイト殿下は歴史を、貴族を、何より騎士を重んじておられる。ヴィクトール殿下は平民の重用が過ぎるのだ」


 あらら、前時代的。異世界こっちでは普通なのか?

 守旧派が担ぐ相手がイグナイト。

 革新派が担ぐ相手がヴィクトール、って構図か。


 ん? エリザヴェートは誰に担がれてるんだ……?

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