第162話 ホームとアウェーの圧倒的な差

 斥候分隊(仮称)の一人がこちらの骸骨兵スケルトンウォリアーに気付いた。というか気付くように姿を見せたわけだが。


「魔物を発見。ス、骸骨スケルトンです!」

「落ち着け。大した脅威ではない」


 一瞬慌てた隊員だが、隊長がすぐに落ち着けた。練度はまあまあ、か。そんなことよりも彼らの兵装。棒状のアレは――銃か?

 驚嘆する俺を他所よそに、連中は言葉を交わす。


「この視界の効かない森の中では奇襲を受ける可能性が」

「問題ない。奴らは音で所在が分かる」


 隊長の認識は概ね正しい。

 ならば、こういう手はどうだろうか。 


 ――骸骨兵の動く音が急激に増した。

 木々の葉が揺れさざめく音よりも遥かに多い骨の動く大音響が木霊する。

 これにはさしもの隊長も色を失ったようだった。


「音は何処からだ!?」

「ぜ、全周です!」

「森の木に反響しているのではないのか!?」

「はい、隊長。いいえそうではありません! 全周包囲を受けつつあります」


 徐々に包囲を狭め、姿を見せつける骸骨兵。


「数は10……12……まだ増えます」

「撤退する。一番薄いところを食い破るぞ」


 即断即決。いい判断だ。

 が、そこへ誘導されているとは気づくまい。


「全員私に付いて来い!」


 そうそう。指揮官先頭、大事な心掛けだ。

 足元が定かな場合であれば、な。

 次に指揮官かれの足裏が踏むべき地面は


「なっ!?」


 その場所ポイントには、深い深い落とし穴をあらかじめ掘っておいた。

 退路を限定して引き込めば一丁上がりというわけだ。


 俺のホテルの近所で軍だろうが何だろうが小勢に後れを取るわけがない。

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