第168話 獣耳と癖っ毛の感触、と約束
ナターシャへの説明も終わり、俺はエリザヴェート、ノヴァと共に出発する。
丁度リュカが玄関前にいた。
チェックアウトの客待ちだろう。
「リュカ」
「ユーマ! おはようデス!」
「おはよう。ちょっと麓まで送ってくれ」
この時間帯はリュカ以外の馬車も稼働してるはずだから、大丈夫だろう。
「いいデスヨ!」
二つ返事のリュカ。こいつ馬車のローテーションとかあんまり考えてないな。
馬車は御者台にリュカと俺を、荷台にエリザヴェートとノヴァを乗せてつづら折りの坂を下っていく。
朝の風が心地よい。
「――ユーマはいつ帰ってくるデス?」
「どうかな。いつとは言い切れないな。そんなに早くは帰れないだろうし」
「うにゅー」
眉を八の字にして唸るリュカの髪の毛をくしゃくしゃと撫でてやる。
細い髪がゆるゆると指に絡みつく。
「心配するな。ちゃんと帰ってくるから」
「チチウエも
「あー……」
そうか。不安にさせてたか。
「俺は絶対に帰ってくるよ。約束する。それに、もし俺に何かあればアイが気付く。いざって時はリュカも、アイと一緒に助けに来てくれよ」
リュカの獣耳がぴょこんと跳ね上がった。
「はいデスヨ!」
「よし、いい子だ」
「うにゅにゅ」
リュカの髪をもう一度くしゃくしゃに撫でてやる。
今度は気持ちよさそうに目を細めていた。
そうこうしているうちに“風”の祠が見えてくる。
「ウェントリアスに用があるから、ちょっと寄ってくれ」
「“風”様! はいデスヨ!!」
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