第151話 評価基準の問題と関係性の有無

 頭がくらくらするものの、呆けている暇は無さそうである。


 王位継承権争い。


 王政が敷かれているのだからそりゃそういうこともあるだろう。お家騒動なんて考えただけでもうんざりするのに、巻き込まれるとか冗談じゃない。勝手にやっておいて欲しい。丁重にお断りして、お引き取り願おう。


「どうにも宿屋の主人如きには、手に余るお話のようですが」

「ノヴァは、貴方様のことを大変評価しております! 我が王国にあっても無二の存在であると申しておりました」

「……勇者殿の過分な評価には汗顔かんがんの至りでありますね」


 ノヴァめ、余計なことを吹き込みやがって。にしてもいつ話した? 

 まあ、営業許可を取り付けに行った時しかないだろうな。

 ……後でみっちり説教してやる。


「いいえ。ノヴァは御世辞など口にできない性格ですし、身贔屓みびいきかもしれませんけれど、人を見る目も持っております」


 完全に身贔屓だろうソレは。

 それはさておき。


「誠に申し訳ありませんが、私には御家の継承問題に関わる理由がありません」


 関係ないから巻き込まれたくない。

 

「ですから――」


 お引き取りを、と口に出すより早く、


「関係なくもありませんよ」


 と、エリザヴェートは確信的な表情で告げてきた。

 俺が無関係じゃない、だと?


 ……ふーん、面白い姫様だ。


 口の端が笑いそうになるのを俺はこらえて、第三王位継承権者と視線を合わせた――

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