第135話 ホテルは昼間も忙しい

 昼前――

 チェックアウトの時間が過ぎるとフロントは多少余裕が出来る。だからと言って暇なわけでは決してない。朝食の後片付けやら前日の売上の集計やらやることは多い。


「フロントは私が見ていますので皆さんは順番に休憩を取ってください」

「「はいっ」」


 アイの指示に新人スタッフ達が背筋を伸ばして返事をする。なんかここだけ軍隊のようになってるな。フロントに残ったアイは高速で宿泊台帳の整理と売上集計を行っている。


「早いな」

「いえ、普通です」


 アイは声をかけた俺を見ている間も手は動いている。ハイスペックすぎるな。


「昨日の売り上げは?」

「銅貨504枚です」

「割引き無しで?」

「そうですね。割引券のご利用はありませんでした」

「じゃあ84室か」

「はい。支配人、朝食代を別途頂くことになさってはいかがですか? 今のところ利益は出ておりますが、朝食に関する費用が膨大です」

「やっぱり?」

「はい。特にジャムの単価が。アレを無料で提供するのは、もてなしとして過剰かと考えます」

「そこで差別化してるってのもあるんだが、わかった。ちょっと検討するわ。もうしばらくは現状維持でいこう」

「仰せのままに、支配人」


 と、その時だった。


「戻ったデスヨ!」


 リュカが両手いっぱいにメモ書きを抱えて帰ってきた。

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