第87話 むか~しむかしの、ことじゃった~
日が落ちかけてもナターシャは帰ってこない。
骸骨兵が松明を焚いて明かりを確保してくれる。アイは虚空に手を突っ込むと平然とテーブルセットを引っ張り出してきた。そこへ座らされるとお茶まで出てくる。至れり尽くせりだな。
結局、とっぷりと日が暮れ夜になってナターシャが姿を見せた。きちんとメイナード町長も連れている。偉い。よくやった。
「遅くなりました!」
「十分だ。メイナードさんもご足労かけて申し訳ない」
「こちらこそご連絡いただきありがとうございます」
「早速、モノを確認していただきたいのですが」
遺跡の入り口にメイナード町長を連れて行くと、彼は「やはり」と呟いた。
「何か心当たりがおありのようですが」
「……この山の守護精霊様を
守護精霊ときたか。それもこの山の。
既に無断でホテルおっ建てたり道路工事ガッリガリにしてるけどお怒りになってないだろうか。怒ってたらとっくに出てきて暴れているような気もするのでまあ大丈夫か。どうだろう。
「これは町の言い伝えなのですが、ムラノヴォルタができた当初は裏の山、つまりこの山で様々な問題が起きたそうです。魔物、獣が大量に増えて町を襲ったり、土砂崩れが起きたり、それは酷い有様だったそうで」
「それで山の神様っていうか精霊様を祀ったと?」
「仰る通りです。町が
二百年前。
「いよいよ守護精霊サマに道路工事の件はお伺いをたてておいた方が良さそうな雰囲気だな。事後承諾になっている点は謝罪するとして」
主語精霊とやらがこの遺跡に今もいるならば、であるが。
「アイ、ナターシャ準備してくれ。骸骨兵は待機でいい。メイナードさんもよろしければご同行いただけますか?」
「勿論です」
メイナード町長は快諾してくれた。
身内以外の証人もいた方がいいだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます