第62話 両者を隔てるのは崖だけではなくて
吊り橋のこちらとあちらで向かい合う。
こちら側には俺とアイのふたりだけ。
あちら側にはざっくり20名ほどの冒険者たち。
「懲りないね、お前ら」
「今日こそ塔を攻略してやる……!」
先頭に立つリックが喚き散らす。
だからダンジョンじゃないとあれほど。
「一応形式的に確認しておくが、ご宿泊を希望されるお客様はおられませんか?」
「ふざけるな!」
「ふざけてなどいない。メイナード町長にはご理解いただいたが、うちは宿泊施設だ。お客様にはお泊りいただくし、襲撃者にはそれ相応の対処をする」
「黙れっ! 行くぞ皆!」
「「オオオーッ!」」
雄叫びとともに吊り橋に殺到する馬鹿ども。
もうちょっと話し合いをする気にはならないのだろうか。
ああ、嫌だ嫌だ。会話ができない相手に話しかけることほど無為なことはない。
「――アイ」
「承知しました、支配人。総員、
アイが右手を挙げ、振り下ろす。
ひゅんひゅんと風切り音がして、俺たちの頭上を通って無数の矢が文字通り雨霰と降り注ぐ。さて、何人が無事橋を渡り切れるだろうか。
「無理だろうな」
なにせ合図を終えて手持ち無沙汰なアイが、吊り橋のこちら側で思いきり橋を揺らしているのだ。あ、またひとり橋から落ちた。
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