第55話 リュカの素行について齟齬があるか

「当直見張り勤務の骸骨兵スケルトンウォリアーの視覚情報から、獣人の娘が小鳥を調教テイムして、手紙を飛ばしているのを確認致しました」

「ほう」


 調教、ね。リュカもなかなかやるもんだ。


「デュワンゴにつきまして、玄関内に入れたせいか若干犬臭いと判断します」

「それも骸骨兵?」

「いえ、私の主観ですが、何か」

「いや、骸骨でも鼻が利くのかな、と思って。たしか倉庫に消臭剤があったはずだから撒こうか。あと手隙の骸骨兵にたのんでシュラ用の小屋作ってもらってくれ」

「――飼うのですか?」


 言い方が相変わらず酷い。矯正は無理かな。


「その話は昨日したよな? あの子もウチで雇う」

「穀潰しを増やしてどうなさるのですか、支配人」

「怒ってる?」

「怒っておりません。問い質しているだけです」


 怒ってますねアイさん。

 だからといって撤回もできない。


「あの子――リュカはいい。きっと役に立つ」

「ユーマ様は何をご覧になっておられるのですか?」

「明日のことかな」

「それは、未来、という意味ですか」


 流石、察しがいいな。「ヤツ」が特別製というのも頷ける。


「だからリュカのことはそこまで気にしなくていい。好きなようにさせておけばいい。最低限の監視だけつけといてな」

監視それは勿論です。情報がどれほど漏れても構わない、と?」

「あのリュカがしかも手紙で伝える程度の内容ならね」


 伝わったところでどうということはない。


「……ユーマ様はあの獣人に期待なさっているように仰っていませんでしたか?」

「諜報能力には期待してないよ。彼女の本領は別だよ」

「そうなのですか?」

「アイもすぐに気付くよ。だからあんまり邪険に――」

「――しておりませんが」


 また食い気味にきたな。


「では本日は各グループより数名抽出して小屋を作らせます。他は通常通りに」

「任せた。お客様か冒険者が来たら知らせてくれ」

「承知しました」


 前者お客様は望み薄だがな。

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