第12話 鍵のかかっていない自動ドアを開けられないレベル

 三人組がホテル玄関に辿り着いた。

 自動ドアは電源落としてるけど普通に手ぇ突っ込んだら開いちゃうんだよなあ。

 サクっと侵入されてしまうな、と思っていると、


「おいこの扉、硝子ガラスだぞ。こんなでかい一枚板の」

「どういう技術で作られてるんでしょうか」


 軽装の男とぼろ布の男が口々に感嘆の声を上げている。

 あー、そっちか。感心してるだけか。文明レベルが隔絶してるんだな。施錠もしていない自動ドアの開け方に発想が至らないレベルだというのは今後の行動の指針になる。


「で、この扉、どうやって開けるんだ?」


 鎧の男は興味が無いようである。脳筋か。物理担当か。


「この扉の下についてるのが鍵穴だと思う」


 と軽装の男が言った。

 正解だ。鍵は今掛かっていないが。

 軽装の男が鍵穴を調べはじめた。細い針金のようなものを突っ込んだりしながらうんうん唸っている。ただのシリンダー錠だが彼にとっては難易度が高いようだ。もうこのまま諦めて帰ってくれればいいのに。


「めんどくせえな。叩き割っちまおうぜ」


 鎧の男が苛ついた調子で提案した。

 おいおいおいちょっと待てコラ。

 俺が静止するより早く、


「馬鹿やめろ!」

「何考えてるんですか!」


 他のふたりが同時に止めにかかってくれた。


「このガラス扉だけでいくらになると思ってんだ!」

「あなたは敵襲に備えてください! これだけの遺跡です。強力な守護者ガーディアンがいるに違いありませんよ! 何が切っ掛けで現れるかわからないんです」

「わかった。わーかーったーよ」


 鬼気迫る表情のふたりに鎧の男は諸手を挙げて提案を取り下げた。

 実際問題ここは遺跡じゃないし、俺の守護者アイなら隣でお前らのこと滅茶苦茶冷めた目で見てるわけだが。

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