第二章

第19話 ボロ雑巾拾っただけなのに

 ――そんなこんなですっかりダンジョン扱いされている当ホテルである。


「困ったものだな」

「お疲れ様です、支配人」


 さて、過去最高の二十人弱の冒険者を退けたわけだが、回を重ねるごとに増えていくなあの連中。一体どこからあんなにチャカポコ湧いて出てくるんだろうか。


「……ん?」


 骸骨兵スケルトンウォリアーの一体がボロ雑巾のような塊を引きずっていた。

 なんだ? ゴミでも拾ったんだろうか?


「アイ、あのボロいのはなんだ?」

「雑巾かと思いましたが、心臓の拍動を検知しました。生き物です。かなり不衛生ですが人間です」


 アイは布をめくって一度頷いた。

 俺も覗き込む。

 薄汚れてはいるが間違いなく人間の少女だった。アイに続いてまたロリか。


(良かったのう)


 いや、喜んでないから。お前、ほんと黙ってろ。


「アイ、ちょっとそいつ川で洗ってこさせてくれ。あとはメシの支度。パンとスープでいいから」

「はい、支配人。食事については材料を冷凍庫から頂戴しますがよろしいのですか?」

「構わんよ。別に予約が入っているわけではないしな」


 残念ながらな。


 骸骨兵スケルトンウォリアー数体で川まで運び身ぐるみ剥がされ水洗い。その後バスタオルを数枚巻き付けられて連れ戻されてきた少女は、朝食会場に連行されていた。


 俺はその子にパンが幾つかとスープカップの乗ったトレイを差し出してやる。

 トレイを受け取る彼女の向かいの椅子に俺は腰掛けた。


「ほれ、食え。おかわりもあるぞ」

「えっ。いいんでふか?」

「食いながら訊くな」


 よほど腹が減っていたのか凄い勢いで貪りはじめる少女。途中喉にパンを詰まらせて死にそうになっているのを、横に控えていたアイがすかさず水を飲ませてやって事なきを得ていた。


「それにしてもこのタオルふかふかですねー。ごはんもおいしいです。あ、おかわりもらっていいですか?」


 ハート強いなこいつ。

 俺はおかわりのパンを用意するようアイに指示しつつ尋ねた。


「で、お前は何者だ?」


 少女は食べかけのパンを慌ててごくん、と飲み込――みそこねたのだった。

 何度も詰まらせるな。アイ、水だ水もう一杯。

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