第15-1話 Bブロック─瀬李チームVS間藤チーム

 一回戦を終えてから数分後、Bブロックの2チームが会場入りする。

 チーム瀬李せりは、瀬李せり悠香はるか新島にいじま夜宮よみの幼馴染コンビ。

 チーム間藤まとうは、間藤まとうけい海代かいだ飛彩ひいろの、此方も彼女らと同じく幼馴染コンビ。正確には、四人が幼馴染みなのだが。

 コンビネーションに関して言えば、誰よりもいい物を見せてくれるだろう。


「両者、構え!!」


 男性教員の合図に、それぞれ抜刀し構える。

 悠香はるかはブロードソードに該当するタイプの剣を、夜宮よみも同じくブロードソードに該当するタイプの剣を、けいは二丁のM93Rを、飛彩ひいろはその体格に見合う、大剣を構えた。


「始めえぇ!!」


 男性教員が上に掲げた手を振り下ろすと同時に、飛彩ひいろが大剣を、後ろに引いた状態で二人へと走り出す。大剣も薙刀や槍と同じで刀身だけでなく、柄の部分にも記述式が刻まれている。

 夜宮よみがブロードソードを同じように後ろに引き、魔力を刀身へと誘導する。刻まれた術式に直接触れないと、技式が発動できないわけではないが、それにはかなりの練度が必要になってくる。まあ軍等ではほぼ必須の技術だが。

 そういう観点から見ても、平民に属される彼女は相当な努力をしたのだと分かる。


あたしに任せて!星剣技式【斜攻クルバ】」


 青白く輝きを放つと同時に、飛彩ひいろへと駆け出す。

 【斜攻クルバ】は下段から上段へと振り上げる単発業。彼の攻撃をガードする為に発動させた訳だが、技式を使わなければ何かしら害が及ぶ程に、彼の一撃は重いのだ。

 飛彩ひいろは柄を伝い、剣先まで刻まれた術式へ一気に魔力を送る。紅く輝きを放ち術式が起動する。


「冥剣技式【黎冥メリーレイ】」


 飛彩ひいろは飛び上がり、大剣を両手に持ち変えて上段に構える。

 【黎冥メリーレイ】は、上段から振り下ろす単発業。その威力は絶大で高威力。

 紅く輝く残像を残しながら、振り下ろされた一撃は、下段から振り上げられた、夜宮よみの一撃によって防がれる。つばぜり合いになり、甲高い金属音を響かせ、火花が飛び散る。

 その隙間を逃がさんと、つばぜり合いを続ける飛彩ひいろの、左横に移動した悠香はるかが魔力を込めたブロードソードを下段から振り上げる。


「星剣技式【斜攻クルバ】!」


「のあ!?」


 空中で制止した状態でのつばぜり合いだった為、彼女の攻撃をもろに食らった飛彩ひいろは、気の抜けた声を出して、上へ弾け飛ぶ。

 ブレイク状態になり、完全に無防備状態な所に夜宮よみの追撃が走るが、二つの魔弾が彼女の肩を掠り、攻撃がキャンセルされる。


「ナイスカバーだぜ、けい!!」


「突っ走り過ぎだぞ、飛彩ひいろ!!」


 言葉を交わして飛彩ひいろは、バックジャンプでけいの隣に立つ。


「いったぁ~、良いのくれるじゃん!」


 夜宮よみが右肩をさすりながら、称賛の声を上げる。


「流石の命中精度だね」


 ニコッと笑いながら称賛する。

 二人は直ぐに戦闘モードの顔つきに戻り、ブロードソードを構える。それに倣うように男子二人も各々武器を構え、牽制し合う。数秒の沈黙の後、女子二人は同時に走り出し、魔力を流して技式を発動させる。


「星剣技式【平境円線パラレル・アーク】」


 夜宮よみがブロードソードを、自身の体と水平にし、片手持ちから両手持ちに切り替えて、けいへと向かう。


「星剣技式【三燐錬角トライエック・ゲラーデ】」


 数秒遅らせて技式を行使した悠香はるかは、ブロードソードを上段に構え、けいへと飛びかかる。

 飛彩ひいろけいの前に立ち塞がり、大剣を床に突き立て盾の様にし、衝撃に備える。

 【平境円線パラレル・アーク】は自身を軸に黄色の輝きと共に回転斬りを行う業。三半規管が弱い者は酔うこともあるのだとか。

 大剣目掛けて放たれたは、ガンガンガンッと火花を散らしながら激しくぶつかり合い、三回転した所で業が止まり動きを停止させる。

 大剣のガードが届かない頭上から悠香はるかの【三燐錬角トライエック・ゲラーデ】が降り注ぐ。


 氷継ひつぎ達が使う想継エーテル剣技式【三隔進行エース・ゲラーデ】の元となった業。剣の動きも違いは無い。

 動作寸前の所でけいの右手に握る銃から放たれた魔弾を、ワンテンポ遅らせて左手に握る銃から放たれた魔弾を、先の魔弾にヒットさせて跳弾させる───かと思いきや、当てられた魔弾から魔方陣が現れ、半透明の盾が出現する。


 だが、動作前だったこともあり、悠香はるかは体を右に捻ることで半透明の盾を避け、彼の左隣に移動する。


 ───銃を使ってすぐなら、隙は十分にある……。ここなら!!


 彼女の予想も空しく外れ、右手に握られた銃が悠香はるかに向けられる。その為少しの躊躇いが生じ、技式が動作する時間を越え、使われなかった魔力が刻まれた術式から宙へと霧散する。

 けいの黒く伸びた前髪で隠れた朱色の右眼が隙間から見え、彼は全てを見透かした様に眼を細める。悠香はるかは瞬時に後ろへ飛び退き、ブロードソードを構え直す。


 夜宮よみは業の終了後、直ぐにその場から後ろへと飛び退き、飛彩ひいろの追撃に備える。

 飛彩ひいろはあらかじめ込め続けていた魔力を止め、技式を行使する。


「冥剣技式【蔽楼ノウ・ガーテル】ッ!!」


 【平境円線パラレル・アーク】同様に三回転しする業。だが、威力は断然此方の方が強い。

 夜宮よみは業を行使して直ぐの為、迫る【蔽楼ノウ・ガーテル】を防ぐ為にブロードソードに魔力を流す時間が無い。


「ウラァァァ!!!」


 気迫迫る声と共に、自身を軸に回転し業を繰り出す。


「ッグ!!」


 彼女はブロードソードを左横で逆手持ちに切り替え、盾の様にするが、その衝撃には耐えきれずに、ブロードソードを弾かれ横腹にクリーンヒットし、右方向へと吹き飛ぶ。


 夜宮よみは空中で体勢を整えきれずにそのまま床へと叩き付けられる。二回バウンドして、ズサァァァッと床を滑り、観客席の真下の壁に当たるギリギリで止まる。


「よーちゃん!?大丈夫!!」


 悠香はるかは遥か後方で横たわる相棒に声をかける。


「だ、大丈夫だよ……。結構頭痛酷いけどね」


 夜宮よみはブロードソードを杖代わりにしながら、左手でズキズキと痛みが走る頭を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。


「そんなによそ見してていいのかな?」


 けいは口元を緩ませ笑みを浮かべながら、体を180度回転させて相棒の心配をする悠香はるかに向けて、二つの魔弾を発砲する。


「ッく!!」


 魔弾は悠香はるかの両肩を掠めて速度を落とさず壁に当たって床に落ちる。

 彼女は再びブロードソードを構え直して思考を巡らす。


 ───まずは厄介なけいから仕留めたいけど……武器は飛び道具で相性最悪。なんとか懐まで入れれば…………



 


 

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