第397話

昨日も今日も、私はずっと困惑をしている。新生徒会発足以来、私はずっと朱音ちゃんに舐められてきた(ごんちゃん曰く)

私は威厳はないとは感じていたけど、ちゃんと先輩として立ててくれていたから気にしてはいなかった。だけど、周りからは可哀そうな目で見られていたらしい(切なすぎる)


昨日から朱音ちゃんの私への態度が変わり、ニコニコと笑顔で接してくれるのは嬉しいけど態度の変動がありすぎて戸惑い気持ちが追いつかない。

隣にいる芽衣も朱音ちゃんの態度の変化に驚き、真里ちゃんも驚いている。

今までツンが入っていた話し方にツンが抜けデレが大量に入った話し方は怖すぎる…。



高瀬先輩と名前を呼ばれた時、最初朱音ちゃんからとは分からなかった。

余りにも甘い声で言われ、後ろにいた朱音ちゃんを目視してもキョロキョロと私の名前を呼んだ人を探した。

そして、ニコニコした顔の朱音ちゃんにもう一度名前を呼ばれ体がフリーズする。


芽衣に名前を呼ばれフリーズは解除できたけど、私は目をキョロキョロし挙動不審になる。

真里ちゃんもずっと戸惑っているし、「お菓子をどうぞ」と私にお菓子を渡してくる朱音ちゃんに芽衣も口をポカーンとしている。

綺麗にラッピングされたお菓子の入った袋を受け取り私は小さな声でお礼を言った。



「お姉ちゃんに教わって作ったのできっと美味しいと思います」


「わぁ、、楽しみだな…。でも、何で急にお菓子を?」


「生徒会でいつもお世話になっているお礼です」



一応、生徒会長としてみんなを引っ張れるよう頑張っているけど、急にお礼ですと言われてお菓子を渡されたら何か他の意図があるのではないかと疑ってしまう。



「朱音…部活行かないと遅れるよ」


「うん、それでは失礼します」


「部活頑張ってね」


「はい!」



朱音ちゃんから貰ったお菓子は美味しそうで、美味しそうだけどついこのお菓子に何か入っているのではないかと疑う。



「朱音ちゃん…変わったね」


「うん…ビックリした」



昨日のことは芽衣に話をしているから知っている。でも、態度がここまで変わった朱音ちゃんを目の当たりするのは初めてで、芽衣が「変な物でも食べたのかな…」と心配そうに言うのは私に対して何気に酷い。



「あっ、ごめん。本音が…」


「酷いよー」



私は芽衣の言葉に拗ねてお菓子の袋を開けてお菓子を一つ食べた。そして、ふふふと笑う。それぐらい美味しく最高だった。



「美味しそうだね、私にも一つ頂戴」


「やだ」


「水希のケチ!」


「さっき私に対して酷いこと言った罰」


「謝ったでしょー」



私の腕をスリスリと撫で甘えてくる芽衣は私の落とし方を熟知している。すぐに芽衣の可愛さに落ちた私はお菓子の袋を芽衣に渡し、「美味しい〜」と言いながらお菓子をパクパクと食べる芽衣を見つめた。

そして、私は雄叫びをあげる。酷い…全部食べた。これは芽衣のヤキモチとかではなく無意識行為でそれぐらい美味しかったからだ。



「ごめん…食べちゃった」


「そんなー」



空になった袋を持ち、私は肩を落とす。カケラが残ってるけど、流石に袋を口に当て食べるわけにはいかず家に帰ってやろうと決める。せめて、一個ぐらい残して欲しかった。



「ごめんって…」


「別に…大丈夫だし」


「今度、お菓子作ってくるから」


「ケーキがいい…」


「チョコレートケーキ作ってくるね」


「へへ、楽しみにしてる」



私は芽衣にとことん甘くすぐにデレる。「芽衣も食べたいな」と最強にキモいセリフを言っていると、目をギラギラと光らせた松村先輩が突然現れた。そして、私が手に持っていた袋を確認し驚いている。



「水希、朱音に手を出したの…?」


「はぁ?そんなことするわけないじゃないです!やめて下さいよ、芽衣がいるのに」


「そうよね、水希に限って…」



頭に手を当て苦悩する松村先輩。チラチラと私を見て「水希のタラシにやられたのかしら…」と呟き、ため息をつかれた。



「どうしたんですか?」


「昨日、朱音にお菓子の作り方を教えてと言われて…最初は真里ちゃんにあげるのかなって思っていたら出来上がったお菓子を綺麗にラッピングし始めて。それに、真里ちゃんの苦手なホワイトチョコ味だし。もしかして真里ちゃん以外に好きな人が出来たのかなって思ったの」


「私は何もしてませんからね!それに、朱音ちゃんに限って真里ちゃん以外を好きになるなんてあり得ないですよ」


「分かってるわよ」



私は悲しいけどずっと朱音ちゃんに舐められていた(めちゃくちゃ悲しい)

やっと、バレー談議で話が合い距離が縮まった。でも、確かにそれだけで朱音ちゃんの態度が変わるのはやっぱりおかしい気がする。



「私は昨日、朱音ちゃんとバレーの話をしただけですよ」


「えっ、、水希、バレー好きなの?」


「はい、見る専門ですが」


「好きな選手いる!?」



急に鼻息荒く私に好きな先輩を聞いてくる松村先輩。昨日の朱音ちゃんと一緒だ。



「引退するまでは木村選手で、今は古賀選手です。お母さんは高橋選手が好きでした。後は熊前選手や佐々木選手、、」


「一緒!うわー、水希のお母さんと話をしたいよ。私ね、よく昔の試合を見るのが好きでね、特に高橋選手のブロックにボールを当てて弾き出す技が好きでね。身長もね…って水希ちゃんと聞いてる?」


「あっ、はい…」



松村先輩の勢いに押され、部活に行きたくてもなかなか行けない。このままでは部活をサボることになってしまう。

でも、離してくれない松村先輩は目をキラキラとして私の腕をブンブンと振ってきた。

さわちんに怒られる…私は目で芽衣は先に行ってと合図し芽衣が頷いてそっと消えた。


私も消えたかったけど、、松村先輩に腕を強い力で掴まれ逃げられなかった。くそ、バレー談議なんてするんじゃなかった…。

この姉妹、バレーの話になると豹変する。

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