第395話
芽衣の身長が150センチ、未来ちゃんの身長が153センチ、守田さんの身長が150センチ。
みんな可愛い身長で真里ちゃんが「可愛い」と言いたくなる気持ちは分かる。
だから、泣かないで。昨日、朱音ちゃんに怒られた真里ちゃんが落ち込んでいる。
授業とHRが終わり、芽衣と部活に行こうと教室を出ると真里ちゃんが廊下に立っており、私の顔を見た瞬間泣き出すから焦った。
でも、小さい子を見ると「可愛い」と言う癖を治したいですと言われても難しい案件だ。きっと本能的なのものだから無理だと思うし、口癖はなかなか治らないから口癖だ。
「もう朱音に怒られるの嫌なんです…」
「でもさ、本能には逆らえないと思うよ」
「そんな…」
真里ちゃんの気持ちは分かるけど、子猫を見ると可愛いって思ってしまうのと一緒だし。
「水希、最近の真里ちゃんは私と未来ちゃんに会っても可愛いって言わない気がする」
「そうだっけ?」
「うん、きっと慣れたんだと思う」
そっか。本能には逆らえないけど、慣れることはできる。真里ちゃんが身長の小さい女の子に会って耐性をつけたら慣れて言わなくなるかもって安直だけど思った。
「真里ちゃん、小さな子といっぱい会いに行って慣れよう。そしたら、、別に慣れなくてもいいよね!うん、大丈夫!」
怖い、いつの間にか真里ちゃんの背後にいた朱音ちゃんが私をギラリと睨む。おっかない顔をして真里に余計なことを言うなってオーラを出され、私の死亡フラグが見えたから急いで言葉を言い換えた。
「朱音…」
「真里、部活遅刻するよ」
「分かった…」
「それでは失礼します」
朱音ちゃんに引っ張られる真里ちゃんが可哀想と思いつつ、朱音ちゃんからの立場だと嫌だよねって気持ちも分かるから難しい。
「やっぱり無理なのかな…」
「無理だと思う。私は諦めてるもん」
「えっ、諦めるの早くない!?」
「水希のタラシのことだよ」
愛おしい恋人が獣のような鋭い目つきをする。150センチの可愛い彼女は最近子猫ではなくタスマニアデビルの方のイメージが強い。
芽衣には絶対に言えないけど最近凶暴だし、可愛いけど、めちゃくちゃ可愛いけど凶暴だ。
「ごんちゃんに聞いたよ。守田さんだっけ?また、タラシ発動させてたって」
「誤解だよ!何もしてないもん!」
「ふーん、いつものことだからいいけど」
胃が痛い。今、ものすごく真里ちゃんの気持ちが分かる。どうしようもない苦悩に泣きそうだ。タラシってどうやったら治るのって。
「ほら、部活に行くよ」
「はい…」
「水希。確かに水希のタラシはムカつくけど受け入れているから大丈夫だよ」
大丈夫だよと笑顔で言われても、その前の言葉でムカつくと言われたら大丈夫ではない。家に帰ったら真里ちゃんのことも兼ねてお姉ちゃんに相談した方がよさそうだ。
「ねぇ、守田さんってどんな人…?」
「えっ、守田さん?小さくて可愛い人だよ」
「ふーん、そうなんだ」
「あっ、ヤキモチ?へへ、芽衣がヤキモチ焼いてくれた〜って痛い!ごめんなさい…お願いだから叩かないでー」
私はすぐに調子に乗る癖があり、いつも芽衣を怒らせる。そして、反省の繰り返しだ。
「水希、そう言えばクリスマスどうする?」
「ふふふ、任せといて!ばっちり予定立てたから。芽衣は私が組み立てたデートコース楽しみにしててね」
大学交流会が終わったら冬休みに入り、1年で最大のイベントの日のクリスマスがやってくる。去年はお姉ちゃんに呼び出され、やけ食いに付き合った。
今年は私が朝から夜までのデートコースを考えており、既にプレゼントも決めている。
「付き合って、二度目のクリスマスだね」
「1年って早いね。水希と一緒にいると1日があっという間に終わる」
「私もだよ。来年、私達は3年になるんだね…時が過ぎるの早いな」
「早いね…先輩達卒業だもん」
もうすぐクリスマスが来るのは嬉しい。でも、クリスマスが終わりお正月やバレンタインが過ぎると3月が来て卒業式が来る。
お姉ちゃん、恭子先輩、早川先輩、佐藤先輩、松村先輩が卒業する。大好きな先輩達が卒業してなかなか会えなくなるのが寂しくて想像しただけで泣きそうだ。
「水希、眉毛がハの字になってるよ」
「想像したら悲しくなった…」
「先輩達をちゃんと送り出せるようしっかりしないとね。特に高瀬先輩が心配性だから」
「うん、頑張る」
私は泣きそうな自分を我慢するため、さわちんを誘い走ることにした。風を浴びていれば目が渇き、気持ちも落ち着いてくる。
頑張れ自分!頑張れ弱い心!頑張れ…
「水希!水希!ちょっと見て」
私は必死に自分を鼓舞しようとしていた。でも、さわちんに邪魔をされ渋々中断する。
「何だよー(キメ顔してたのに…)」
「ほら、あれ…佐々木さんと守田さんじゃない?」
「えっ?あっ、本当だ!でも、何で…」
体育館の外になぜか、真里ちゃんと守田さんがいて楽しそうに話している。先生とからは守田さんが来る予定は聞いていない。
私達は壁から顔だけを出し、声を潜めながら話しをする。浮気ではなさそうだけど見てはいけないものを見てしまった気分だ。
「これってヤバい状況?」
「いや、大丈夫でしょ」
「浮気じゃないよね?」
「真里ちゃんに限ってそれはないよ」
「真里は私に一途ですから大丈夫です」
「だよね〜・・・えっ?」
いつのまにか私達の背後にいた朱音ちゃん。本気で怖かった…恐怖で心臓が止まりそうで、さわちんは尻餅をついてビビっている。
私はこの世で一番怖いものはお化けではなく、笑顔の裏にあるヤキモチだと思う。
顔は笑っているのに笑ってない目が対照的で、朱音ちゃんから冷気を感じる。
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