第391話
部活終わり、さわちんと私とひかるで片付けをしていた。冬は外が暗くなるのが早く、顧問の先生から早く帰るよう指示されている。
みんなで片付けをし、話しながら部室まで歩いていると先に部活を終えたごんちゃんが大股歩きで来て、ひかるの腕を掴み「早く帰ろう」と強い言い方をする。
いつも明るく、ニコニコしているごんちゃんのこんな風な態度と言葉の圧は初めて見る光景で、私は戸惑い嫌な気持ちになった。
ひかるへの態度が上からで、私はごんちゃんみたいな態度は好きじゃない。
だって、大好きな彼女に圧をかけるなんてひかるが可哀想だよ。戸惑ってるし。
「ねぇ、水希。朝倉さん、どうしたの…?」
「分かんないよ…」
ひかると結ばれたごんちゃんの中でどんな変化が訪れたのか…私の好きなごんちゃんが変わってしまった。
ひかるは私の物だ感が強く「早く制服に着替えてきて」と言い方がきつかった。
私とさわちんも部室に入り、みんなで制服に着替える。このまま、ひかるとごんちゃんを見守るだけでいいのか悩んだけど恋人同士の間に入るのはどうかと思い悩んだ。
そして、制服に着替えたひかるの手を握り、早足で歩くごんちゃんを見て後悔した。
恋人同士間で起きていることは第三者には分かりづらい。でも、私達に手を振るために振り向いたひかるの顔が暗かったから…私は走った。何が起きているか分からなくても、これ以上後悔したくないから。
「ごんちゃん、待って」
「なに」
「あの…もっと、ひかるのことちゃんと見たほうがいいよ」
「はぁ?何それ」
「ごんちゃんが高圧的というか…」
はっきり言えずもごもごとした言い方だったけど、大事な友達だからこそ言わないといけない。笑顔のごんちゃんが好きだから。
「水希には関係ない…」
「ごんちゃん…」
「朝倉さん、私も水希と同じ意見だよ。ひかるへの態度が乱暴に感じる」
「2人には関係ないないじゃん!」
私とさわちんに嗜められたごんちゃんが乱暴な言い方をする。今、すっごいムカついた。
「ちゃんと、ひかると顔を見ろって言ってるの!悲しそうな顔をしてるじゃん!何で気づかないの?恋人でしょ!」
「水希に言われるとムカつくの!」
あっ、ひかるの手を強引に引きごんちゃんとひかるが帰っていく。私もさわちんもごんちゃんの態度に呆然として足が動かない。
「朝倉さん…マジでどうしたのかな?」
「分かんないよ…」
「水希、追いかけるよ!このまま、ひかるを朝倉さんと帰らせるわけにはいかないし」
「ラジャー!」
Nao.side
私はひかるちゃんが心配でずっと恭子と影からこっそり見守っていた。私達は勉強そっちのけで2人が軽音部にいる時から隠れてこっそり覗いている。
そして、先輩としてみんなを見守りながらいつでも出てこれるようにしていた。
さっき、ひかるちゃんを追いかけた水希を褒めてあげたい。あのまま、ひかるちゃんを帰していたらきっと嫌な展開になっていた。
朝倉さんとひかるちゃんの事情を話している恭子もみんなを見守りながら応援している。ただ、応援もしているがこれからのワクワク展開を見たいのも本音。
「恭子、私達も追いかけるわよ!」
「がってん承知の介!」
ワクワクしてはいけないと分かっているけど、この手の青春感は楽しい。
どんな展開になるかワクワクしているのは、何かあったら私と恭子が止めに入るつもりだし止めれる自信があるからだ(ふふふ)
「菜穂、それにしても朝倉さんって現金だよね〜。まさかここまでヘタレが治って強気になるなんて面白い子だよ」
「そうね、単細胞…は失礼ね。猪突猛進なのかもしれないわね」
スパイ映画のように隠れながら追いかける。私達は見やすい位置に隠れ、またみんなの会話を盗み聞きする。
あー、朝倉さん可哀想。ひかるちゃん、めちゃくちゃ怒ってる。さっきまで大人しかったひかるちゃんはもういない。
私達はこっそり写真とムービーを撮り、ケラケラと笑う。朝倉さんが地面に正座をし、ひかるちゃんが仁王立ちしている。
そして、なぜか水希と田村さんも正座をしている。あの2人はヒーロー的な感じだったのに、もしかしたら何かしたのかもしれない。
あの2人、空気読めない時があるから。
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