第390話
Hikaru.side
私は帰りのHRが終わり、爽子と部活に行く準備をしていた。でも、まーちゃんが教室に来て私を腕を掴み、軽音部に連れて行く。
今日は芽衣ちゃんがお休みで、マネージャーは私しかいないからってまーちゃんに言ったけど全く聞き入れてくれなくて…。
まーちゃんはずっと水希を意識する。きっと、水希が私の初恋の相手で、ファーストキスの相手だからだよね。
でも、私が好きなのはまーちゃんでいい加減水希にヤキモチで絡むのはやめてほしい。
時々、水希への当たりが強くてその度に水希に申し訳ない気持ちになり辛くなる。
私は窓際の椅子に座らされ、まーちゃんが楽器の練習をするのを見つめる。
まーちゃんのギターを弾く姿がカッコよく大好きな姿だけど私は陸上部のことが気になりチラチラと何度もグラウンドを見た。
携帯にも触れないし、きっとみんなに迷惑を掛けている。仕事サボってるみたで嫌だよ。
「水希が気になるの?」
「違うよ、今日は芽衣ちゃんがお休みだから私もいなかったら陸上部はマネージャーがいないって分かってるでしょ」
「あのさ、陸上部のマネージャー辞めない?」
「えっ、何で…」
「ひかるちゃんに鍵盤担当として軽音部に入部してほしい。ほら、ピアノ習ってたから丁度いいし」
「嫌だよ…私は陸上部のマネージャーがしたいから」
最初は水希のそばにいたくて陸上部のマネージャーになったけど、今はやりがいを持ってやっている。頑張っているみんなのサポートをしたくて自分からやっているのに、まーちゃんには伝わってないみたいだ。
「芽衣がいるから、陸上部に2人もマネージャーいらないと思うよ…」
「何でそんなこと言うの…」
「私がひかるちゃんにそばにいてほしいから」
それってまーちゃん中心の考えで私のことなんて考えてくれていない。
悲しいよ、私が今まで頑張ってきたことを否定された気分で悔しい。私は陸上部のマネージャーになれてよかったって、心から思っているのに。
「私は陸上部のマネージャーを辞めない。だって、私が頑張りたいと思える場所だから」
「・・・水希は関係ない?」
「いい加減にして!何で水希の名前が出るの?私は陸上部みんなのサポートをしたいの。仕事も誇りをもってやってるの!」
初めてまーちゃんに声を荒げた。お陰で他の部員の人が驚いて私達を見つめる。
「ひかるちゃん、ごめん…でも、ひかるちゃんが水希といるとモヤモヤして嫌な気持ちになる。ヤキモチだって分かってるけど、放課後もひかるちゃんにそばにいて欲しくて」
「無理だよ。辞めたくないもん」
「そっか、、分かった」
初めての喧嘩になり、沈黙の時間が流れる。空気が重く、まーちゃんといると息苦しい。
まーちゃんの気持ちは分かるけど束縛みたいで嫌だし、私も頑固だから譲れない。
「まーちゃん、私そろそろ行くね」
「えっ…今日ぐらいサボっても」
「今日だから行かないといけないの。みんなに迷惑かけてるから」
まーちゃんが不貞腐れた顔をしたけど、私は立ち上がり「また、後でね」と言い、軽音部の部室から出て行く。
廊下を歩きながらため息を吐き、私は急いで水希にLINEの返事をする。何度も体調でも悪いの?って心配してくれて申し訳なかった。
私は急いで部室で着替え、ドアを開けると水希がいて「良かった、安心した」って優しい言葉を掛けてくれた。
水希は私が今まで出会った人の中で一番優しく、だから惹かれたのかもしれない。
初恋は実らなかったけど、今も友達として水希のことが大好きだ。
「あれ?ひかる、上のジャージは?」
「忘れちゃって」
「ダメだよ、風邪ひいちゃうからこれ着て」
「大丈夫だよ、ほら動いたら温かくなるし」
「ダメ、私が気になる」
水希が着ていたジャージを渡され、私は温かい水希のジャージを羽織る。ちょっと落ち込んでいたから水希の優しさが身に染みる。
「ごんちゃんと話し合えた?」
「まだ…なかなか言う機会がなくて」
「そうだよね。難しいよね」
悩みを友達に相談できるってことはとても幸せなことで、水希や高瀬先輩が一緒に悩んでくれるだけで心が軽くなる。
特に高瀬先輩には昨日色々と相談に乗ってもらって、私の強い味方で有り難かった。
水希は…まーちゃんのことを考えると本当はあんまり甘えちゃいけないって分かってるけど、私の中では水希は大事な親友だ。
だから、こうやって心配しくれることが嬉しいし、辛いとき支えてくれる親友に助けられ落ち込んだ私を笑顔にしてくれる。
「明日、水希に迷惑掛けちゃったお礼にお菓子作ってくるね」
「やった!ありがとう〜」
水希は私のドジのせいで着ていたジャージを貸してくれた。これは水希の優しさであり、深い意味なんてない。
それは私も分かっていることで、だから優しさに甘えた。でも、まーちゃんは嫌な顔をする。でも、って言い訳になるのかな…。
でも、きっと水希は爽子や未来ちゃんにも同じことをする。助け合いに近いやりとりで、水希を友達と認識しているからこそだ。
私はまーちゃんが好きで、好きだからこそ結ばれて嬉しかったのに今は嬉しさが減少している。まーちゃんの想いが辛い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます