第375話
Kyoko.side
菜穂と図書館で受験勉強を頑張りつつ、小休憩をするため自販機でジュースを買い、外のベンチに座る。頭を使いすぎて疲れた。
糖分を取るため、甘いジュースを飲み一息つきながら空を見上げた。今日は綺麗な青空で、気温も寒くなく気持ちのいい日だ。
だけど、図書館なのにチラホラとカップルがいて私のやる気を阻害する。高校生のカップルがただ一緒に勉強をしているだけでもイラつくのは当然であり仕方のないことだ。
受験勉強の日々で、大学に受かるまでは勉強漬けになる。娯楽がない故、この前の被害者の会と相談の会がめちゃくちゃ楽しかった。
またみんなで集まりたいなって思っていると菜穂がジッとあるカップルを見つめる。
菜穂の気持ちは分かるが、余りにもじっと見過ぎだ。菜穂は眼力が強い故、相手がびびって逃げてしまう。ほら、逃げ出した。
「菜穂、睨まないの」
「えっ、睨んでなんかないよー」
「でも、相手逃げたじゃん」
「ただ、見てただけだよ」
私達の前にいたカップルは同じ高校生で、きっと勉強をしに図書館に来たのだろう。
だけど、休憩の合間にイチャつくなんて羨ましいったらありゃしない。
「あー、彼氏欲しいなー」
「恭子ってどんな人がタイプだっけ?」
「優しい人!後は顔は好みの人だったら尚更良し!後、身長も自分より高い人がいい」
「優しい人って水希が基準なんだよね?そんな人いる?」
「いないから困ってるの!」
水希には困ったものだ。性格が良すぎて、私の基準を狂わせた。
「水希がさ、男の子と付き合っていたら恭子に彼氏できたかな?」
「えっ、何で?」
「水希は女の子の芽衣ちゃんと付き合ってるから今もあんな感じだけど、男の子と付き合ったら変わっていたのかなって」
それはあり得る…水希は今、芽衣ちゃんの彼氏側の立場だから元来の性格とタラシと優しさが継続されている。
でも、彼氏が出来たとなると彼女側になる。その際、今の水希はいないかもしれない。
「うーん、想像したくないな。今の水希が好きだから変わってほしくない」
「だよね、私も水希に変わってほしくない。妹の彼氏の惚気話なんて聞きたくないし、想像できないよね。男の子と歩く水希なんて」
でも、水希はなぜ男子にモテなかったのだろう。顔は普通に可愛いし、性格も良いし、きっと男友達はいたはずだ。
「ねぇ、水希って男子と仲良かった?」
「良かったと思うよ。クラスメイトの男子と話している所を見たことあるし」
「でも、恋愛的な感じはないんだね」
「そうだね。水希の周りには常に女の子が大勢いたし。あー、そっか。水希が男子にはモテなかったではなくて…周りの女子が水希に男子を近づけさせなかったからだ」
「マジで?それは凄いね…」
菜穂が言うには常に水希の周りには女の子がいて、水希を取り囲んでいた。
笑ってしまう、これでは男子は水希に近づけない。みんな、ひっそりと自分達の王子様の護衛をしていたのだ。水希に気づかれないように周りに睨みを効かせて。
「その女の子達に感謝しないとね。水希を護衛してくれてありがとうって」
「ふふ、そうね。姉として感謝しなきゃ」
友達の恋路は出来れば邪魔をしたくない。友達の相手がよっぽどの嫌な奴じゃない限り。
でも、水希だと話が変わる。私が水希と同級生だったら全力で水希から男達を遠のかせていただろう。これは私の我儘で水希が誰の物にもなって欲しくないからだ。
それほど水希はタラシなんだ。一度心を掴まれると離れられない。今も先輩として、もし水希に近づいてくる男子がいたら蹴散らすだろう。芽衣ちゃんといる水希が好きだから。
それに今の水希が好きで、タラシだけどみんなの王子様でいてほしい。
もうすぐ水希の誕生日。私と菜穂、生徒会のメンバーである3年生である計画を立てている。大学生になるとこの町を離れるメンバーがいる。だから、みんなで最後に大好きな水希の誕生日のお祝いをしたかった。
決戦日は11月21日。水希の誕生日の次の日だ。当日は水希が芽衣ちゃんと過ごすため次の日にした。楽しいサプライズを仕掛けている。決戦日まであと1週間。
「ねぇ、恭子」
「うーん、何?」
「最近、気づいたんだけど…私、シスコンみたい」
「えっ?」
菜穂は真顔で何を言っているのだろう。菜穂の行動を見ていれば重度のシスコンなんて分かりきったことだ。
水希に対して口が悪い時があるけど、常に水希を近くに置いている。同じ高校に入学させ、陸上部に入部させ、生徒会にもいれた。
それに、私は知っている。水希に聞いた話では中学時代、菜穂は一年下の水希のクラスによく行っていた。きっと、水希に変な輩が付かないよう見張っていたのだろう。
もしこれを無意識にやっていたら笑える。私にも妹がいるけどこんなことはしないから。
「菜穂、みんな知ってるよ」
「嘘…やだ、私だけ気づいてなかったの」
「水希に彼氏が出来なかったのは菜穂のせいでもあるかもね。菜穂が姉だったら水希にちょっかい掛けづらいもん」
実は菜穂が水希の一番のナイトだ。鬼よりも悪魔よりも怖いナイト。もし、ゾンビみたいに水希に近寄ってくる男子がいたら菜穂がバッサバッサと打ちのめしていくだろう。
私は翼の生えた黒い天使と名付けたい。女の子だからナイトじゃ可哀想だからだ。
笑顔と睨みを効かせた黒い天使は漆黒の大きな翼で水希を包む。何かあると大きな翼で飛んでいき周りに氷の微笑のごとく微笑む。
みんな恐れ多くて水希には近づけないし、護衛も沢山いて指を咥えるしかない。
でも、今は違う。護衛がいないし、菜穂も水希に芽衣ちゃんと言う可愛い彼女が出来て安心をしている。そして、油断は災いの元だ。
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