第338話

飲み物をごくごくと飲み、私は一息つく。一番の緊張から解放された私はやっと休憩ができた。でも、私はまだやることがあり野外の会場に戻らないといけない。

あと30分後には文化祭のメインイベントであるモテ女コンテストがある。さっきからアナウンスで間もなくモテ女コンテストを開催されると興奮気味に放送されている。


さっき、靴箱にある投票箱をお姉ちゃんが楽しそうに持って野外ステージに行ってしまった。モテ女コンテストはお姉ちゃんが実行委員的な役割で動いている。

お姉ちゃんがまた動き出して怖い。今年の文化祭はお姉ちゃんが全て牛耳り、好き勝手され生徒会や手下が振り回されている。


私は生徒会長としてイベントのお手伝いしに行かないといけないけど、ため息が出てくる。

だけど、そんな私よりため息を吐いているのがひかるだ。ごんちゃんはまだ色んな人に捕まっているのか、連絡がなくひかるは寂しそうに携帯ばかり見つめている。

ごんちゃんめ、大事な恋人のひかるが寂しがってるの早く気付け!おたんちん!



ライブをしていた時、ギターを弾くごんちゃんのイケメン度は上がっていた。お姉ちゃんにセットしてもらった髪が更にカッコよさを増して、ファンが増えた気がする。

でもね、恋の先輩として1つだけ私からのアドバイスする。私も散々やらかしたから分かる。付き合い初めは不安になることが多い、だから常に相手のことを見ないとダメだよ。


ごんちゃん、ファンサービスも程々にしないと酷い目に遭うからね。ごんちゃん、ライブのとき気づいてた?熱い視線でごんちゃんを見つめていた子達がいたのを。

ただのファンだったら良い。でも、ファン的な気持ちからいつのまにか本気の恋をしてしまう子もいる。

今日は楽しい文化祭だ。みんないつもよりハイテンションではしゃいでいる。


よく、こういうイベントの日はみんな盛り上がりカップルが出来やすいと聞く。ハイテンションなるから色んな気持ちが上がるのかもしれない。別に私は人それぞれだからいいと思うけど、友達の恋にライバルが登場するのは嫌だ。気をつけないと恋は暴走列車の様に恋人の間に入ろうとしてくる。


私は波乱なんて嫌いだ。穏やかに生活したいし、友達の恋を見守りたい。でも、楽しい文化祭なのに不穏の空気を感じる。

とうとうひかるに連絡してこなかったごんちゃんをみんなで探しに行くと、ごんちゃんが楽しそうに女の子と話していた。

ごんちゃんのバカ…いつまでも恋人を一人にしちゃダメだよ。辛そうな顔をしたひかるが下を向いてしまった。



「ごんちゃん!」



流石にこのままではいけないと思い私はごんちゃんに声を掛ける。ヘラヘラした顔でやっとひかるの元へ帰ってきたごんちゃんは落ち込んでいるひかるに気づいていない。

ひかるが悲しそうな顔をしているのに、さっきまで話していた子に手を振り始めた。


まるで昔の私を見ているようだ。私がいかに芽衣を傷つけていたか反省する。

だからこそ、ひかるの気持ちが分かるから私は明るい雰囲気にするためもうすぐモテ女コンテストの話をしようとすると私は突然現れた松村先輩に連行される。


ステージ裏に連れて行かれ驚いていると、椅子にちょこんと真里ちゃんが座っていた。きっと私と同じ様に松村先輩に突然連行されたのだろう。

佐藤先輩も早川先輩と一緒にステージ裏に来て苦笑いしている。きっと佐藤先輩も早川先輩に騙され連れてこられた。



「3人が揃ったわね。さぁ、この服に着替えるのよ!」


「お姉ちゃん。まず、私達がここに連れてこられた理由を説明してよ」


「そんなの決まってるじゃない。3人がモテ女コンテストで学年毎のグランプリに選ばれたからよ。つまらないぐらいダントツの投票で、予想と変わらないから発表の仕方を変えることにしたの」



基本、モテ女コンテストは半分の投票をまず実行委員(お姉ちゃん)がチェックし投票された生徒を選出する。

いつもだったら票は分散し接戦になり、選ばれた生徒をステージに上げ、残りの票を読み上げグランプリ者を決定するらしい。


でも、今年のモテ女コンテストは票が分散しなかった。3年の部は佐藤先輩。1年の部は真里ちゃん。2年の部は私に決まった。

最後、2年の部はごんちゃんが追い上げたけど私の圧勝と言われ…ため息を吐く。



「お姉ちゃん、何をするの…?」


「まずは衣装に着替えてもらって、ステージに立ってもらう。それから…どうしようかしから。本当だったら盛り上がった後にグランプリに選ばれた人が一発芸をって思っていたけど水希が一発芸をしてもスベるだけだし、姉として妹の哀れで可哀想な姿を見るのは恥ずかしいし、却下することにしたわ」



何という酷い言い草。でも、一発芸がなくなりみんなホッとしている。



「どうしようかしら。既にグランプリ者が決定してるし、時間が大幅に余るから告白大会でもする?グランプリに選ばれた3人が意中の人に告白とか?」


「お姉ちゃん、無理だよ!」


「そうね、洒落にならないわね」



お姉ちゃんは何とかして私達を使い何かをしたいらしい。でも、急遽だからヘンテコな案しか言わない。

みんな、お姉ちゃんが更に変なことを言わないから戦々恐々で怯えている。

それに、ひかるのことが気になる。大丈夫かな…ごんちゃんは私より女心が分かってないから不安だよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る