第263話
ご飯を食べ終わったあと、自分の部屋に行き自主勉強を開始する。東條大学に受かるには日々の勉強が大事だ。
私は到底足りない偏差値の高い大学を目指しているとまだ誰にも言っていない。
芽衣にはいつか言おうと思っているけど、今の成績じゃ無理だって分かるからもっと成績を上げて伝えたかった。
出来れば芽衣も東條大学を目指してくれるといいな。私と違って頭がいいし、芽衣だったら確率的に私の何倍も合格率が高い。
だからこそ私は頑張らないと。大学に入ったらやりたいことを見つけ、芽衣に誇れる人生を掴まないといけない。よし、勉強だ!勉強の頑張りはきっと身につく。
黙々と教科書と対峙して勉強するとあっという間に時間が経ち、お姉ちゃんが部屋に入ってきた。
後ろから覗かれてやっと見られているのに気づいた。集中すると気づかないもんだね、お姉ちゃんは巨大なオーラを出しているのに。
「偉いじゃん」
「あっ、びっくりしたー」
「生徒会長になって、やっと変わってきたわね」
「まぁね。生徒会長になって初めての試験で悪い点は取れないよ」
「頑張りなさいね」
お姉ちゃんに頭をガシガシと撫でられ、髪がひどい有様だ。もっと優しく撫でてほしい。お姉ちゃんは褒めるにしても荒いよ。
よし、晴菜さんを送る準備をしなきゃ。コートを着て、下に行くと晴菜さんが笑顔で手を振ってくれ、私も笑顔で手を振り返す。
「晴菜さん、送りますね」
「いつも、ごめんね」
今日は普通の世間話をして晴菜さんを家まで送り届けた。私の心臓はずっと普通で、晴菜さんと笑いながら話せて楽しかった。
「また来週お願いします」
「うん、よろしくね」
「あっ、そうだ。晴菜さんにお礼を言ってもいいですか?」
「何?」
「晴菜さんのお陰で少し成長できました」
「私は何もしてないよ」
「行きたい大学を見つけられたし、やっと自分で道を作れそうです」
晴菜さんからしたら戸惑うかもしれないけどちゃんとお礼を言いたかった。
東條大学を目指しますって言ったら笑われるかもしれないけど、素直に行きたい大学を言った。言葉にしないと叶わないって思ってるし有言実行したいから。
「東條大学目指しているんだ…」
「はい、無謀かもしれませんが頑張ります」
「水希ちゃんが東條大学に入学する頃には私は卒業してるね…」
「受かればの話ですよ」
あれ、うん?ちゃんと聞き取れなかったけど「4歳差は大きいな…」って言ったのかな?
下を向いていた晴菜さんがパッと上を向き、「絶対に受かって私の後輩になってね」って言ってくれて嬉しい。
お姉ちゃんだったら「私の50倍は頑張らないと無理よ」とか言いそうだし。
大学受験まであと2年。この2年間でどこまで頑張れるかがキーだ。
苦手教科を無くし、お姉ちゃんと同じぐらいの成績を取らないとまずセンター試験で東條大学を受けることもできなくなる。
もっと気合を入れ直さないと、2年なんてあっという間に来る。
「晴菜さん、互いに頑張りましょうね」
「うん、私も頑張る」
「良い恋…して下さいね」
「分かってるよ…大丈夫」
もし、私と晴菜さんが2歳差だったら、、って変な想像だけど、きっと制服姿を見て綺麗な人って憧れていたかも。
同じ陸上部だし、走っている姿に見惚れていたかもね。4歳差は小学校以外同じ学校に通うことができない年齢だ。
私が中学1年生の時は晴菜さんは高校2年生で13歳の私には17歳は大人すぎてきっと声も掛けられない。
だから学年関係なくこんな風に話せているのは有り難く、出会えたことが奇跡だ。海で出会い、神社で再会して、家庭教師をやってもらって嬉しい縁だよ。
芽衣との出会いも縁だよね。甘くて苦い恋をし、付き合えて最高の縁を貰えた。
恋がしたいって思っていた昔の私が今の私を見たら羨ましがるだろう。
「水希ちゃん、送ってくれてありがとう」
「じゃ、帰ります」
「水希ちゃん、、」
「はい?」
「私、、次は水希ちゃんが心配しなくてもいい恋をするから」
「はい。私はヒーローを卒業したので任せられる相手に託します」
「えっ…卒業」
「もう私が晴菜さんのヒーローになる必要がないので」
あれ、晴菜さんがまた下を向いてしまった。私、変なこと言ったかな…。もしかして卒業って言葉がダメだったかな。
言葉って難しいよ、上手く伝えたいことを伝えられない時があるから。
「あの…」
「ごめん、、気をつけて帰ってね」
「はい、、」
自転車に乗ると当たり前だけど歩く時より早く前に進む。私は家まで軽快にペダルを漕ぎ、今まで帰った。
晴菜さんが玄関のドアの前でうずくまり泣いていたことを私は知らない。
諦めようとした恋がなかなか頑固な時、どうすればいいのだろう?何度も好きが復活してどんどん感情が強くなっていく時、誰を恨めばいいのだろう。
なぜ恋は辛すぎる。
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