第252話

「水希、生徒会長おめでとう」


「芽衣、ありがとう」



生徒会就任の挨拶が終わり、みんなが教室に帰っていくなか芽衣が「おめでとう」と言いに来てくれた。

推薦人をやってくれた先輩達もおめでとうって言いに来てくれて嬉しい。さわちんはずっと落ち込んでいるけど流石にほっとく。ひかると未来ちゃん達が慰めているからそのうち諦めるだろう。



「水希。生徒会長、頑張りなさいよ」


「うん、頑張る。お姉ちゃん、、ご指導お願いします」


「任せなさい。厳しく指導するから」



お姉ちゃんの指導は調教と変わらないから怖いけど、逃れられないと思い既に諦めている。

それに、お姉ちゃんだと教わりやすいし細かい所まで聞ける。



「水希がどんどん遠くに行っちゃうな、、」


「そんな事ないよ!芽衣の側にずっといる」


「うん、絶対だよ」



暫くは生徒会で忙しいと思うけど、芽衣が寂しい思いをしない様にしなくてもいけない。

それに癒しがめちゃくちゃ必要だ。庶務の頃はお姉ちゃんや先輩達に任せっきりだった。

言われたことだけをして、自分で行動することがなかったから頑張らないと。



「さわちん、こっちに来て」


「水希…何?」


「明日、早速新生徒会役員で集まるから」


「えー、、」


「先輩の皆さん、引き継ぎお願いします」


「うん、みんなで明日生徒会室に行くね」



生徒会の始動はもう少し先だけど、明日は前生徒会役員の先輩達から新たな役員に引き継ぎをしないといけない。

私以外、みんな初めての生徒会だ。覚えることやこれから先やらないといけない事が沢山ある。始動はまだ先でも、お姉ちゃんに聞くことが沢山あり忙しい。



「さっ、みんな戻りましょう。お昼ご飯食べる時間が無くなるわ」



お姉ちゃんがみんなに声掛けをし、体育館から教室に戻る。芽衣と廊下を歩いていると、チラチラと見られ緊張するけど新生徒会長としての宿命だ。

これから先、私はみんなの前で話さないといけないし生徒会長として引っ張らないといけない。



「水希、注目の的だね」


「緊張する」


「きっと、水希は更にモテるだろうな」


「モテないよ!それに芽衣以外興味ないし」


「カッコいい恋人を持つ宿命だね」


「それは私の台詞だよー」



生徒会長になる=モテるだったら、みんな生徒会長になるだろう。それに女子校だし、モテるって概念が他の学校と少し違う。

自分で言うのは恥ずかしいけど、アイドル化するだけで《キャー》って言う感情も一過性だしすぐに消える。


これが共学だったらどう変わるのかな?きっと私が生徒会長になっても男の子にモテることはないだろう。

中学でもモテたことないし…高校生になってもきっと変わらない。芽衣は共学の学校に行っていたらめちゃくちゃモテていただろう。


友達としてそばにいてもいいのか悩むぐらいモテて、羨ましいって思っていただろうな。

芽衣にいつか彼氏ができて…ただの想像なのに苦しくなる。はぁ、、想像力が豊かだとリアルな想像をするからダメだ。自分を追い込んでしまう。



「芽衣、生徒会長頑張るね」


「うん、応援してる」


「後で…パワーくれる?」


「いいよ、沢山あげる」





もうすぐ春が終わる。春の嵐は季節が変わると過ぎ去っていく。でも、6月にならないと春は終わらない。今はまだ5月で春の嵐が風力を強くしながらこっちに向かっている。

桜が綺麗だ。もうすぐ桜の季節が終わりを遂げる。落ちた桜の花びらを拾い、手のひらに乗せると後ろからフワリと抱きしめられた。


甘い香りがする。私には晴菜さんの心が分からない。だから、抱きしめられてどうするべきなのか分からず動けなくなる。

5月が終わろうとする今日が私を一番パニックにさせる。何度か抱きしめられたことはあるけど、晴菜さんが泣いているから…意味が分からない私をパニックにさせた。



今、話していることはもうちょっと先の話。今から話は戻る。生徒会選挙は5月の上旬。パニックになるのは5月の下旬の話だ。

春の嵐は最後の最後に巨大なものが来た。大きくて私は取り込まれてしまう。

出会いの順番は変えることが出来ない。私はまぐれで偏差値の高い高校に受かり、同じクラスで隣の席に芽衣が座り仲良くなった。


でも、もし隣にひかるが座ったら?芽衣と仲良くなる前に晴菜さんと出会っていたらってタラレバだけど、それを言えないぐらい春の嵐は吹き飛ばす。順番を変えることが出来ないなら、今を変えればいい。










今は5月の上旬。もうすぐ来る2年生になって初めての中間テストに頭を抱える。生徒会長になった今、赤点を取る訳にはいかない。

一応、自分なりに勉強はしているけどそれでも不安は拭えない。お母さんが前回、私の点数が伸びたことに味を占め勝手に晴菜さんにまた家庭教師をお願いした。


勉強を週一で教わることになり、私を悩ます。ずっと見えない壁が嫌で、でも自分の勘違いかもしれないとモヤモヤしていた。

壁を作らない私は見えない壁が苦手だ。距離を感じて、寂しい気持ちになる。

でも、乗り越えてはいけない壁もある。壁は自己防衛なんだ。越えてはいけない壁。

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