第242話

朝起きると、芽衣が私の服を握りしめ寝ている姿を見て愛おしさが込み上げる。ずっと寝顔を見ていたいけど、一度帰らないといけないからそろそろ起きないと。

でも、この時間が延ばせたらと願う。好きな人に腕枕して可愛い寝顔を見れて、こんな幸せな時間はないよ。



「うぅん…水希、、おはよう」


「おはよう」



このまま学校を休みたい。芽衣と2人っきりの時間を過ごしたいのに無情にも時間は過ぎていき起きないとまずい時間になってきた。

起きる前に一度おでこにキスをし、抱きしめる。好きな人にキスや抱きしめることができるのは最高の恋人の特権だ。


名残惜しいけど起きあがろうとすると、芽衣から抱きついてきた。「離れちゃ嫌だ」って言われたら起きれないよ。

4月は日曜日もバイトの私はなかなか芽衣と一緒にいられない。バイト先に遊びに行くと言ってくれるけど我慢させて申し訳ないよ。



「芽衣、遅刻しちゃうよ」


「うん…」


「また、泊まりに来るね」


「絶対だよ」



春の風が気持ちいい。この季節はスポーツするには最高の季節だ。自転車を漕ぎながら、春の気候の気持ちよさを全身で感じた。

家に着くとお姉ちゃんはもう家を出た後で、私も急いで制服に着替える。髪を軽くセットするため鏡を見ると目の下にクマが出来ていた。昨日ちゃんと寝たのに不思議だ。


一度顔を叩き、気を引き締める。パンを一枚だけ食べ急いでバスに乗り学校に向かった。

私は不器用だ。取り柄もなくて何かに取り組む時、がむしゃらにすることしか出来ない。

恋も一緒で、芽衣を大事にするにはがむしゃらに愛を伝えるしか出来ない。

不器用すぎて芽衣からしたら困るだろうな。







私は授業中、ずっと何で晴菜さんがmさんだと認めないのか考えていた。本当に違うのか、認めたくない理由があるのか。でも、私には否定する理由が分からない。

mさんとインスタで交わした会話はごく普通の会話ばかりだ。お互いにアップした写真の感想だったりでそれ以外何もない。


だから、余計に理由が分からなくて困ってしまう。私より4歳年上の考えていることは16歳の私には難しいのかな。

私が20歳になった時、晴菜さんの気持ちが分かるかもしれないけど…あと4年、長いよ。

はぁ、、疲れるな。晴菜さんと出会うまでこんなにも悩むことはなかった。


晴菜さんと再会して悩み事が増え、私を苦しめる。晴菜さんに芽衣と距離を置いていた時、美味しいココアの店に連れていって貰ったり風邪薬の役割の飴玉を貰ったり私はいつも助けてもらっている。

だから、何かしてあげたいと言う気持ちが強く今度こそは私が守りたいと思ってしまう。


この考えがダメなんだよね。でも、どうしたらいいのだろう。解決策が分からない。

もし、晴菜さんと出会っていなければこんな風に悩まなかったのかな?不思議な縁で繋がっている晴菜さんに出会わなければなんて思わないけど、いつも気持ちが落ち着かない。


今日は晴菜さんが家庭教師として来る日だ。家まで送る時、もう一度インスタのこと聞いてみようかな。また否定されるかもしれないけどスッキリさせたい。

あっ、しまった。今日は授業のノートが全然取れていない。勉強を頑張ると決めたのに全然ダメだ、、大学受験まであと2年なのに。



「芽衣、今日ノート貸してくれる?」


「書きそびれたの?」


「うん」


「水希、目の下にクマが出来てるよ。無理はしないで、、」


「してないよ。心配かけてごめんね」



今日、乗り越えたら大丈夫。きっと大丈夫だと言い聞かせる。ナイトは自己満足だ。晴菜さんも望んでないし、芽衣も望んでない。私の勝手な思いなんて迷惑でしかない。



「水希、、昨日、ちゃんと寝れた…?」


「寝たよ。だから、大丈夫」



芽衣がずっと心配して不安そうな顔をする。私は一度悩みだすと体調に出るみたいだ。

新しい学期が始まり、やることは沢山ある。もうすぐ生徒会選挙の申し込みをしないといけない。アピールとかは苦手だから部活などで頑張る姿を見せれたらいいな。



「へへ、へへ」


「ごんちゃん、朝からずっと気持ち悪いよ」


「失礼だな。まぁ、今は水希に何言われてもへっちゃらだけどね〜」


「どうしたの?」


「へへ、実はね…昨日、部活してる時、、早川先輩が訪ねてきて生徒会に立候補しないかって言われたの!」



はぁ!お姉ちゃんが早川先輩に「選挙よろしくね」って言っていたのを思い出す。くそ、お姉ちゃんめ。ごんちゃんが早川先輩に憧れていること知ってて送り出したな。

あー、だから…部活のホームページ気合を入れていたんだ。動画あるとごんちゃんのアピールにもなるし、私のアピールにもなる。


全てがお姉ちゃんの仕組まれた作戦通りに動いている。ごんちゃんは書記(早川先輩も書記だった)に立候補するってノリノリだし…策略が怖いよ。

それに、さわちんの推薦文は佐藤先輩の手に渡っている。ってことはさわちんの推薦人が佐藤先輩ってことだ。人気のある先輩を使って、さわちんを必ず副会長にする気だ!



春の嵐は一つではないみたいだ。菜穂お姉ちゃん…自分で言ってて気持ち悪い。

菜の付く人は春の嵐を巻き起こす。私は春に縁があるのかもしれない。


芽衣(春のイメージ)

菜穂(春の女王様)

晴菜(まさしく春)


水希(季節感無くて逆に寂しい)

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