第233話

暖かいココアを飲みながら私は晴菜さんと思い出を話をする。去年の夏に初めて海で出会い、約5ヶ月後にまた出会って2人で不思議な縁だよねって笑い合った。

お互い全く覚えてなくてさ、最初に話した場所が自販機で二度目の出会いも自販機だったのが凄いよ。


そして、晴菜さんのピンチをお姉ちゃんが二度も救い私は見ているだけ…情けないね。

この前の合コンも結局何も起きなくて、起きたら困るけど…私は守ると約束したけど何も出来てなくていつもジレンマに陥る。


4歳も年下の私は無力でヒーローの真似事だけだ。口だけじゃ意味がないのに。

甘いココアが身に染みる。落ち込んでいる私をココアが癒してくれる。優しい味だ。

それに、晴菜さんも優しい。勝手に落ち込んでいると優しい言葉を掛けてくれる。



「水希ちゃんといると安心するの」


「そうなんですか?」


「うん、心が安らぐ。水希ちゃんのお陰で強くなれたし」



こんな私でも晴菜さんの力になれたのが嬉しかった。ずっと無力だと嘆いて落ち込んでいたから救われる。

だけど、お姉ちゃんみたいに頭も良くないし、行動力もない。いつも一歩遅れてしまう。

あの時、踏み出していればと後悔ばかりだ。



「くしゅん」


「晴菜さん、寒いですか?」


「少しだけ。今日は冷えるね」


「これ、膝に掛けてください。薄い掛け布団ですけど暖まると思うので」



私が寝る用の薄い掛け布団を晴菜さんの膝に掛け、晴菜さんのココアをもう一度温めるため立とうとすると手を掴まれた。



「あの、、晴菜さんのココアを温めて、、」


「大丈夫だから、隣にいてほしい」


「はい…」



あれ、急に緊張してきた。腕を組まれ、急に甘えられて…これは緊張する。

平常心を保ちたいのに、晴菜さんが手を繋いでくるし…これって自然なことなのかな?

私は芽衣以外の人と手をあんまり繋いだことないし、中学生の時も友達と手を握るなどのスキンシップは少なかった。


境界線が難しい。女の子同士でよく手を繋いでいる子もいるし、相手が男の人だったらスキンシップでは片付けられなくなるけど相手が女の人だと分からなくなる。

でも、きっと芽衣が見たら怒るよね。私はどうしたらいいの…相手が晴菜さんだから手を離すことも出来ない。



「水希ちゃんの手、大きいね」


「そうですか?」


「ほら。私はよく友達に手が大きいって言われるけど水希ちゃんの方が大きい」


「あっ、本当だ」



手と手を合わせ指の位置を見ると私の指が高い位置にあった。今まで気づいてなかったけど私は手が大きいのか。

だから、芽衣の手を握ると手が小さく感じるのだと分かった。赤ちゃんみたいに小さく柔らかな手みたいで全てが可愛い。



「彼女のこと考えてるでしょ」


「えっ、、」


「水希ちゃんって顔に出やすいね」


「そうですか…?(ヤバっ、気をつけないと)」



あっ、晴菜さんがそろそろ寝るねってココアを一気に飲み、台所に持っていく。

なぜだか背中が寂しそうで、晴菜さんが小さく見える。お風呂から上がってきたお姉ちゃんと一言会話し、二階に上がって行った。


もう少し話したかったのにな。残念だけど、私も明日は始業式だから早く寝ることにした。

まだ、お父さんが帰ってきてないから電気をつけたままソファに横になる。

晴菜さんの寂しそうな背中を見た時、抱きしめたい衝動に駆られた。


でも、この行動に変な意味がつきそうでグッと我慢した。抱きしめる行為は難しい。

その行動が友情での行為だとしても相手が嫌な気持ちになるかもしれない。

それに、優しさは時に相手に期待と誤解をさせてしまう。私はひかるを散々苦しめてしまい、二度と同じ過ちはしないと決めている。



私は恋愛経験値が少ない。芽衣が初恋で初めて付き合った人。だから、芽衣と喧嘩もするし泣かせてしまう。

でもね、私なりに頑張ろうと決めていることがある。全力で芽衣を幸せにすること。

浮気をしない、あとは手を出さない…それと、とにかく最低な男がする行為をしない!


私は常に自分に対して自信がないから、芽衣に振られることが怖い。こんな私と付き合ってくれて感謝をしないといけないし。

だからこそ、晴菜さんの元カレ野郎がずっとムカつくのかも。あんな可愛い人に対してよくあんなことできるなって。


何で自分を好きになってくれて人を大切にしたいと思わないの?ましてや、両思いなんてめちゃくちゃ幸せなことなのに。

あいつは本当に晴菜さんのこと好きだったのかな?じゃないと、あんな最低なこと出来ないよ。最初から体が目的だったのかも…。


あー、モヤモヤする。私は恋愛に憧れを抱いているから理想が高いのかもしれないけど、好きな人を裏切る人は嫌いだ。

一度でも裏切ったら、いつか自分に返ってくる。好きな人に裏切られたら私は、恋愛に臆病になり新たな恋を出来ないかもしれない。


筒井が現れた時、怖かった…もしもって。芽衣に好きな人が出来たら諦めるしかない。でも、私は時間を掛けて前を向くと思う。

でも、裏切られたらかなりキツい。その人のことが信じられなくなる。だから、、晴菜さんの気持ちが分かる。どれだけ悩み苦しんだか。自暴自棄になった晴菜さんを想像すると今も涙が出そうになる。

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