第192話

「あの…まだ、話の途中なので」


「芽衣が怯えているの気づいてないの?」


「えっ、あの、、」


「気づけよ!好きな人が困った顔してるの分からないの?自己満足な告白して相手の気持ち考えてないでしょ」


「外野は黙っとけよ」


「はぁ?それはあんたもでしょ」



外野が一番ワーワー騒いでたのに、自分勝手すぎる。私に空気読めよって顔をして、結局イベントを楽しんでいるだけだ。

お陰で部活が終わり、帰ろうとしている生徒達が校門に集まり注目を集めてしまった。

早く芽衣の作ったチョコレートケーキ食べたいのに面倒臭い。



「あの、、ただ、もう一度気持ちを伝えたくて…」


「友達連れてきて、援護してもらって、自分勝手な気持ちを押し付ける告白して上手くいくと思っているの?それに一度振られているなら、もっと考えて行動しなさいよ」


「えっ、お姉ちゃん」


「あの、、前にも言ったように私は好きな人がいるので諦めて下さい…」


「何だよ、、つまんねぇ」



はぁ?何、この外野の態度の悪さ。マジでムカつく。芽衣が1人で帰っている所を狙われ、告白されていたらOKするまでしつこく粘っていたかもしれない。

外野もしつこく煽って、芽衣が泣き出していたかもしれない。想像しただけでイラつく。



「すみませんでした…」


「何で謝るんだよ。お前、頑張ったじゃん」



頑張った?好きな人を困らせたのに頑張ったって馬鹿なの?ダメだ、イライラが頂点に達し我慢ができない。



「何が頑張っただよ!ふざけんな。芽衣が今にも泣き出しそうにしてるのに、それにも気づかず周りは囃し立てて、本気で好きならちゃんと見ろよ」


「水希、もういいよ…」


「好きって気持ちは1人では成り立たないの。自分の気持ちを押し通す前に、相手の気持ちを一番に考えろ」


「ほら、もう行こうぜ…」



あー、イラつく。マジで久しぶりに怒ったし、大きな声を出した。

今日、チョコレートケーキを丸ごと食べないだ怒りは収まらないよ。糖分を沢山摂取しなきゃ。夢でも怒りそうだ。



「水希、やるじゃん」


「水希、よく言った」


「水希…ありがとう。ごめんね」



うわぁ…恥ずかしい///。陸上部の先輩達やお姉ちゃんが私と芽衣を囲みながら褒めてくれたけど、やっと冷静になれて急に恥ずかしくなってきた。

みんな見ないでー、注目されるの苦手なの。あと、お姉ちゃん、、髪ぐちゃぐちゃになるよ。乱暴に髪を撫ですぎ。


はぁ、疲れたな。それにムカついた。でも、芽衣を守れて良かった。

まさか、バレンタインでこんなことになるとは思わなかった。一度、芽衣に告白して振られているのにもう一度告白してくるなんて勇気はあるけど、やり方がずるい。

あれでは相手を追い詰めてしまうし卑怯だ。


芽衣に告白してきた人、芽衣の名前を知らなかった。芽衣のことを何も知らず、見た目だけで好きになるなんて呆れる。

一度目はいいとして、二度目の告白するならちゃんと相手のことを知ろうとしないのかな?中身なんて付き合った後に知ればいいと思っていたの?私には理解できないよ。



「水希…今日、水希の家に泊まってもいい?」


「うん、いいよ」


「急いで、夕ご飯を食べるから待っててくる?」


「じゃ、ケーキを食べながら待つよ。だからゆっくりでいいよ」



芽衣の家に着いた時、芽衣の家に泊まろうか悩んでいた。だけど、急だし明日も学校だし迷惑かなって思っていたから嬉しい。

お互い離れたくないって思いが一緒で幸せだ。それに芽衣が私の家に泊まるの久しぶりでワクワクする。



「わーい、チョコレートケーキだ!」


「いっぱい食べていいからね」


「うん!」



美味しいし〜。やっとでイライラが解消されていく。芽衣、どんどんお菓子作り上手になっていくな。凄いよ。

イベントの日に好きな人とずっと一緒にいれるって幸せだね。寝て起きたら芽衣が横にいるなんて、これ以上の幸せはないよ。


美味しい食べ物はつい黙々と食べてしまう。あっという間にホールのケーキを半分食べ、お腹が満たされてきた。

本当は全部食べたいけど、一気に全部食べるのは勿体無いから今日は半分だけにしよう。

ふふ、明日の楽しみができた。ただ、お姉ちゃんに取られないようにしないと。



「お待たせ」


「もっとゆっくりでも良かったのに」


「早く、水希の家に行きたいもん」


「ケーキ、半分持って帰るから包んでもらっていい?」


「半分も食べてくれたんだ///。美味しかった?」


「もちろん!めちゃくちゃ美味しかったよ」



芽衣はお弁当やご飯などゆっくり食べるのに今日はかなり早くて、無理はしてほしくないけど嬉しい。

明日の準備をし、ドアを開ける前に一度だけと思い芽衣を抱きしめる。愛おしさが爆発して我慢できなかった。



「好きー」


「私も好き」


「よし、私の家に行こうか」


「うん、久しぶりに泊まるから嬉しい」



好きな人には笑っていて欲しい。特に恋人だったら泣き顔なんて見たくない。

芽衣の笑顔が見れて嬉しいな。いつも自信がない私だけど、少しだけ自信が持てたよ。これからも芽衣を守っていくし大事にする。


好きな人と両思いになれる確率は少ない。だからこそ、みんな頑張るし想いを伝えようとする。でも、やり方を間違えればそれは気持ちの押し付けにしかならない。

両思いになれた私は幸せものだ。だから、頑張るよ。芽衣を幸せにする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る