第171話

「大体、水希は未来にヘラヘラ笑顔を見せすぎ。未来に会う度に笑顔振りまいて、、」


「そうなの、妹は顔が引き締まってないのよ。ただ、唯一笑顔だけは良いからタチが悪いのよ」


「普通、友達の彼女とお揃いのキーホルダー付けるか…あり得ない」


「あっ、水希ちゃん。猫のキーホルダー落としてたから持ってきたよ。多分、私を庇ってくれた時に落ちたんだと思う」


「水希、、良いことはしたみたいだけど、友達の彼女とお揃いはダメよ。バカなの?」



さっきから、さわちんとお姉ちゃんが交互に私のことを言うから胸にグサグサと矢が刺さる。未来ちゃんを助けたのに、最後はバカって言われた…。



「水希は誰にでも優しくしてさ…誰にでも手を出しすぎ。芽衣が可哀想だよ」


「それは分かる…水希ちゃんの優しさは誤解しそうになる」


「水希、あれほど言ったでしょ!芽衣ちゃん、泣かしたら許さないからね!」



ちょっと待って…何で私ばっかり責められないといけないの。おかしいよ、2人は喧嘩をしていたはずなのに意気投合したように私に矢を飛ばしてくる。

お姉ちゃんは更に強い矢を飛ばし、矢が刺さりまくった私はフラフラだ。でも、何か一つでも言い返したい。



「猫のキーホルダーは!未来ちゃんのお婆ちゃんが買ってくれたから、、」


「何で私の彼女のお婆ちゃんと仲良くなってるの。おかしいでしょ」


「流石、タラシね。我が妹ながら年齢関係なく女の人を落とすの逆に尊敬するわ」


「お姉ちゃん、違うから!未来ちゃんも何か言ってよ」


「お婆ちゃんがまた遊びましょうって言ってたよ」



違うから、、今欲しい言葉は違うから。お婆ちゃんと遊ぶのは楽しみだけど、その言葉を聞きたいのは今じゃない。

さわちんとお姉ちゃんの冷たい目…体が凍りそうだ。暖房を入れているはずなのに間違えて冷房を入れてしまったように部屋が寒い。



「大体、水希が私にイヤラしいサイトを教えてくるから…我慢できなくなった」


「ちょ、ちょっと待って!誤解を生む。違う、そんなサイトじゃない。あれは勉強用のサイトで、、さわちんが相談してきたから教えたのに酷いよ」


「水希、あんたイヤラしいサイト見てるの!?」


「違う…芽衣の為に勉強してたの」



恥ずかしい、、何でこんなこと言わないといけないの。未来ちゃんも顔を赤くしてるしもう勘弁してよ。

本来、デリケートな部分じゃないの?私も芽衣が痛くないようにって必死だったの。



「あー、もう!私も言わせて貰うからね!」


「うぉ…水希、、どうしたの?」


「さわちん!私は芽衣と結ばれるまで3ヶ月掛かったんだ!毎日キスとか贅沢すぎるし!私だって、初めてを予定していた日に芽衣に拒まれて散々悩んだの!それも私の誕生日だぞ。この辛さ分かる!?」


「う、うん…」


「未来ちゃん!自分は可愛いって自覚しなさい。可愛すぎるからスケベなさわちんがすぐに狼になるの。嫌なら嫌とはっきり言う。芽衣なんて怒るとすぐにグーパンチしてくるんだからね。すっごく痛いんだから」


「はい、、///」


「それに私はタラシじゃない!」


「いや、天然のどタラシよ」


「お姉ちゃん…流れでうんって言ってよ」



はぁ、、少しスッキリしたかも。2人とも反省してるみたいだし、相変わらずお姉ちゃんは女王様スタイルでふんぞり返ってるけど。うぅ…私は足が痺れた。

言いたいことを言えたのはいいけど、さわちんから哀れみの目で見られた。未来ちゃんは照れてるし…また、私は未来ちゃんにタラシぶりを発揮するなってお姉ちゃんに怒られた。



「さぁ、もう遅いしそろそろ解散しましょう」


「未来…送るよ」


「うん…」


「明日のお参り…予定通りでいい?」


「うん」



なんとか収まった2人の喧嘩。くそ…でも羨ましすぎる。お正月にお参りに行けるなんてずるいよ。私も芽衣と行きたい。

はぁ、マフラーを洗わなきゃ。芽衣から貰ったクリスマスプレゼントだから大事にしていたのに。



「水希…ありがとう」


「水希ちゃん、、迷惑掛けてごめんね」



私は2人に手を振り、洗面所で急いでマフラーを優しく洗い始めた。洗いながらため息をついていると、お姉ちゃんが来て頭にポンって手を置かれ撫でられた。



「水希、お疲れ」


「疲れた…」


「モテる人は大変ね」


「モテないよ…」


「女の子ってね、弱っている時に優しくされるとフラッとしちゃうの。特に水希の優しさは裏がないから気をつけなさい」


「お姉ちゃん、どう言うこと…?」


「未来ちゃんの目…玄関で見たとき恋する目だった。元々、水希のファンなんでしょ?」


「勘違いだよ…」



裏がない優しさって、、みんな優しさの裏に下心があるの?私にはよく分からない。

未来ちゃんの事はお姉ちゃんの勘違いだと思うけど、、何度も腕を掴まれ…あれ?とは思った。はぁ…優しさってなんだろう。

疲れるよ、人に優しくするのも気をつけないといけないなんて面倒くさい。



「多分、田村さんからしたから水希はムカつく対象でしょうね」


「何で!」


「だって、1年で生徒会のメンバーだし、体育祭で活躍したし、ピアノも弾けて歌も上手いし、可愛い彼女もいるし」


「芽衣以外はほぼ無理やりだし…」


「彼女から他の女の子のことを楽しそうに聞かされたら水希も嫌でしょ」


「嫌だ…」



さわちんが怒っていたことをお姉ちゃんはズバリ当てた。でも、私は芽衣の為にって必死に頑張っただけだ。

褒めてほしくて、良い姿を見せたくて必死に好きな人の為に努力したんだ。



「あっ、紅白が始まったみたい」


「一番手、誰だろ?」


「水希の好きなアイドルグループみたいよ」


「あっ、そうだった!」


「水希って面食いよね」


「違う!推しがめちゃくちゃ可愛いだけ。芽衣と一緒だよ。好きになった人が偶々可愛かったの」



あれ…?お姉ちゃんから十分に面食いよって目をされた。可愛い子が好きで、可愛いアイドルが好きな時点で面食いだと。

でも、アイドルはみんな可愛いじゃん!アニメの女の子も可愛いし目の保養になる。


私の好きなグループはなかなか変動が多い。でも、激動の中にいてもしっかり足元が見えていたら人は前を向ける。

さわちんも未来ちゃんも…きっと大丈夫。心の内を話せ、心がしっかり地に着いた。

私は巻き込まれて疲れたけど、友達が悩んでいるなら側にいてあげたいし。


早く、芽衣に会いたい。お姉ちゃんのせいで余計に芽衣に会いたくて、、私は二階に上がり電話をした。「水希」って声が聞こえてきて、私の心は一瞬で弾む。

好きな人の声は私の体を包み、幸せな気持ちにさせてくれる。



「芽衣、早く抱きしめたい」


「私も抱きしめられたい」



早く来年になってほしい。会えない日が辛いよ。芽衣は私のエネルギーでもある。

早くチャージさせてほしい。私を充電させてよ、そろそろ切れちゃうよ。

なんて、欲張りな考えなのかな?恋愛に我慢はつきもので、成長させるから耐えないと。

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