第155話

今日はクリスマス・イブ。そして、終業式。学生であれば〈きゃほー〉〈イェーイ〉と言った心情だろう。

私も朝まではそんな気持ちだった。明日はクリスマス〜、冬休み〜って浮かれていた。

なのに、隣には死にそう顔をしたさわちんがいて…全くウキウキできない。



「さわちん、ホットミルクティー冷めるよ」



あっ、ダメだ。私の問いかけに返事がないし、目が死んでいる。普段クールなさわちんはどこかに行ってしまった。

冬の空は空気が澄んで綺麗だ。空気は冷たいけど日差しが暖かく私達を照らしてくれる。

なのに、この場所は梅雨なの?ジメジメして隣から大量の雨が落ちている。


あー、またさわちんが泣き出した。さっきから雨・曇りの繰り返しだ。

このどんよりとした天気をどうにかしてほしい。窓から見える空は晴れているのに、私達がいる場所だけが暗い。

今日、クリスマス・イブなんだよー。クリスマスの前夜祭なの!なのに、何で私は、、



ことの発端はこうだ。焦ったさわちんが悪い!さわちんは手を出すのが早いし(キスを毎日するからだ)展開が早いの。

好きな人に触れたい気持ちは分かる。毎日キスなんてしていたら気持ちは募っていくだろうし分からない訳ではない。


でもね、私もさわちんも抱く側なの。これを忘れちゃいけない。抱く側と抱かれる側はちゃんと想いを一つにしないといけないよ。

だってさ、初めての行為なんだよ。抱かれる側はめちゃくちゃ怖いはずなの、だからこそ相手の気持ちを汲み取らないとダメ。



未来ちゃん、さわちんと付き合ってからの展開の早さに戸惑っていたと思う。付き合った日にキスしてさ(私のことは置いといて…)それから毎日でしょ。

毎日がドキドキしていたと思うよ。好きな人と想いが通じ合って、触れ合う行為は嬉しいと思うけど気持ちが追いついてなかったはず。


急速に進む恋は心の整理ができない。芽衣も初めての交際で戸惑い、お陰で私も手を繋げなかった。嫌われたと思ったよ、、

きっと、未来ちゃんも触れられたいと思っていたはずだけど戸惑いがパンクしたんだよ。

でもな…芽衣に「嫌!」って言われたら私は立ち直れる気がしない。後ろ図さりされたら、、あぁ、想像するだけで無理だ。


クリスマスにって言っていたのに…我慢できなかったのかな。あと2日我慢すれば…一生の思い出の日になれたのに。

まぁ、私も…最高の誕生日を迎えるはずが部屋の隅っこで体育座りしてウトウトしながら終わったよ。他の3人は私のことで盛り上がってるし、何で悲惨な誕生日。



「未来に振られるのかな…」


「それはないと思うよ」


「何で言い切れるの!水希に未来の心の内が分かるのかよー」



さわちんが私の体を揺すり、また号泣するー。確信はないけど未来ちゃん、さわちんのこと大好きだしテンパったからの行動だと思うから未来ちゃんも動揺していると思う。

芽衣、未来ちゃんとどんな話しているのかな。今現在、芽衣が未来ちゃんに恋の先輩として相談に乗ってあげている。



「私が服を乱暴に脱がそうとしたから、、」


「あちゃー、それはダメだよ」


「分かってる…だけど、興奮しちゃって」


「優しくしないと…怖かったと思うよ」



さわちん、狼になってしまったのか。クールな猫から甘えん坊なワンコになり野獣の狼になりコロコロ変わるね。

私は…芽衣の服を乱暴というかそんな風に脱がせたことはない。さわちんには言えないけど、、芽衣から服を脱ごうとしたパターン多かった気がする。


私が必死に我慢してるのに、シャツのボタン全開にされなかなか閉じなかったし…その状態で顔にお胸を引っ付けられた。

あとは、お風呂に入っていたら芽衣が入ってきてお互い裸の状態で向き合い、膝の上に乗っかってきて、、私、偉いと思う。褒めて!



「爽子、大丈夫?」


「あっ、ひかる」



ひかるがこっちに来たということは、芽衣と未来ちゃんも来るのかな?

私と芽衣は終業式とHRが終わったあと、明日のことを話しながら帰ろうとしていた。でも、ひかるがクラスにやってきてさわちんを助けて欲しいと言われ今に至る。


もうね、最初見たときびっくりしたよ。さわちん下ばかり見て生気ないし、魂が体から抜けかけていた。

事情をひかるから聞いて、私達は驚いた。ほら、私達ってラブラブじゃん。私達にとってあり得ないことだから驚くよね。



「未来…来るの?」


「まだだよ」


「そっか…」


「爽子、お腹空かない?クッキー食べ、、」


「食べる!お腹空いた!」



お昼ご飯を食べてないから、お腹が空いてて…だから「食べる!」と言ったのに、あの優しいひかるにチョップされた。

だって、お腹空いてるし大好きなひかるの手作りクッキーを見たら食べたいもん。


分かってるよ、さわちんに言ったって。でも、さわちんはこんな状態じゃ絶対食べないでしょ。だから、私が食べるよ。

ってか食べさせてよ。お腹が空きすぎてもう無理!ミルクティーじゃ、お腹が膨れない。



「水希、ステイ(stay)」


「はい…」



ステイって何?って思いながら、ひかるにチョップされたことに落ち込んでいた。

黙ってじっとしていると、ひかるに頭を撫でられ「はい、ご褒美」とクッキーを貰った。へへ、やった〜。私の尻尾が喜びでブンブンと揺れている。


◇ ◆ ◇


私は英語が苦手だ。そして、ひかるはミルクと言う可愛いトイプードルを飼っている。

ただ、それだけ。クッキー美味しい〜。

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