第144話
「水希…くすぐったいよ」
「芽衣の匂い好きなの〜」
「水希って犬みたい」
「わん」
「こら、私の上で暴れないで」
もぞもぞと芽衣の匂いを嗅ぐため顔を動かす。私の一番のお気に入りの場所は首元だ。ぺろっと舐めると反応もいいし、何度も甘噛みしたりしてつい虐めたくなる。
「水希…ストップ」
「ちぇ」
「そろそろ、服を着なきゃ」
「あっ、もうこんな時間なんだ」
夢中になるとあっという間に時間は過ぎていく。時間はもうすぐ18時半になろうとしていて、私達は約1時間半ベッドの上にいた。
芽衣がずっと私を求めてくるから止まれないし、今日は一段といやらしさが凄かった。
「明日、芽衣の家にお昼前ぐらいに来るね」
「もっと前がいい」
「じゃ、朝の9時に来る」
「うん、待ってる」
芽衣がこれでもかと甘えてくるから顔のニヤニヤが止まらない。部屋着に着替えた芽衣を後ろから抱きしめ、余韻を楽しんでいると「歌ってた水希がカッコ良すぎて苦しかった」と芽衣がポツリという。
照れるね。前はむず痒かった言葉が芽衣に言われると嬉しい言葉になる。もっともっと頑張ろうと思えるんだ。
芽衣に相応しい恋人になりたくてやる気が出てくる。周りにも認められたくて。
「芽衣、ありがとう」
「水希が好きすぎて辛くなる」
「私もだよ。芽衣のことが好きすぎて辛くなることが多い」
恋って実っても楽しいことばかりではない。好きすぎるがゆえに辛くなることがある。
両思いなのに、自分の方の気持ちが重いんじゃないかとか比べてしまう好きの重さに落ち込んでしまうんだ。
「芽衣が大好き〜」
「私も水希が大好き」
「あっ、そう言えば…今日歌った曲ね、芽衣への気持ちを歌った曲なんだ」
「うん、ミクロのような君とで分かった」
「悩んでいた時の気持ちを歌詞にしたから、切ない感じになったけどラブソングだから」
「嬉しかったよ。だから、聞き終わったあと気持ちが爆発しちゃった」
目をキラキラさせ、私の腕の中で輝く芽衣はまさにミクロモザイクそのものだ。芽衣は色んな顔を見せてくれ、楽しませてくれる。
色とりどりのガラス破片のように見てる私の心を弾ませる。恋って本当に偉大だよ。
朝の空気、朝の光、朝の雰囲気が私の心を躍らせる。朝の8時半にニコニコしながらスキップしている私は側から見たら気持ち悪い人かもしれない。でも、気にしない!
昨日は芽衣と、、うふふ〜クリスマスまで我慢かなって思っていたから喜びも凄い。
あっ、芽衣からLINEが来た。今、部屋の掃除してるよって文面だけで可愛い。うん、全てが可愛すぎる。
芽衣にもうすぐ着くよ〜ってLINEを送り、スキップから早歩きに切り替える。
恋してるな〜、青春してるな〜って高校入学の時に思い描いていた光景を満喫している。
恋って不思議だ。恋を知らなかった私は勉強以外で悩むことがなかった。
でも、芽衣に出会い、好きになって毎日のように悩み…今は芽衣と付き合えて幸せだ。
辛いことも楽しいことも経験しながら前に進み、やっと捕まえた恋をしっかり握り離さないようにしないと。
早く腕の中に芽衣をすっぽりと包みたい。前までは《されたい》と思っていた行為が芽衣と出会い【したい】に変わった。
「水希、いらっしゃい」
「お邪魔します〜」
「水希、こんちゃーす」
「・・・何で、ごんちゃんがいるの?」
「遊びに来た〜」
「バイトは…?」
「今日は休みだよん」
芽衣の後ろからひょっこりと現れた親友。ただ、本当に遊びに来ただけならいい。
でも、ごんちゃんは当人からしたらめちゃくちゃ恥ずかしいことを笑顔で聞いてくるから頬をつねりたくて仕方ない。
「ミクロモザイクの歌詞なんだけどさ、あれって芽衣のこと?」
「そうだけど…」
「やっぱりそうか。実体験を歌詞にすると重みがあるよね」
「もう、何!恥ずかしいよ///」
「勉強の一環だよ。もし、私がラブソングの歌詞を書こうとしても水希みたく書けないなって改めて思ったからさ」
「だから、私に歌詞を書けって言ったの?」
「バラードの曲はラブソングにしたかったけど歌詞が思いつかなくてさ、水希に頼んで良かった」
ごんちゃんは今まで本気の恋をしたことないらしく(軽い片思いはしたこと有り)、一度バラードの曲の歌詞を何度も書こうとしたけど書けなくて悩んだらしい。
でも、私も芽衣と付き合っていなければラブソングの歌詞なんて書けなかったかも。
「ねぇ、水希。恋ってどんな感じなの?」
「えっ…何で?」
「恋の仕方を知りたい」
「恋なんて…いつのまにかしてるものだよ」
「そっか、そうだよね」
相手と出会い、いつのまにか好きになり自分を成長させてくれるのが恋だと思う。私も芽衣も散々悩んで苦しんで、恋を掴んだ。
だから、恋なんて無理やりするもんじゃなくて心が動いたら恋なんだよ。
「今日は珍しく水希がカッコよく見える」
「ごんちゃん、一言多いよ!素直に褒めてよ」
「なぜ、水希がモテるのか分かった気がする」
「いや、私はモテないから、、」
「優しいし、、優しいし、ピアノ弾けるし」
「何で優しいを2度言ったの?褒めるところがなかったからでしょ」
ごんちゃんは素直で、、素直すぎるでしょ!どうせ、顔は普通だもん。それでも、こんなに可愛い彼女ができて人生なんて分からないね。そう、人生は分からない。
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