第115話

試験が…期末試験が終わった。長かった期末テスト期間。部活も休みになり、ずっと勉強漬けだった日からやっと逃れられる。

テスト内容は…うん、赤点は逃れてると思うから良しとする。60点は取れてると嬉しい。


疲れたな、疲れたよ。今日まで部活はないから家に帰ったらゆっくりしよう。

昨日、あんまり寝てないから眠くて…瞼が閉じそうだ。お腹も空いた、、頭を使うとお腹が空き糖分が欲しくなる。



「芽衣、お腹空いた…」


「ごめん、今日は何も持ってない」


「気にしないで…」



あとはHRだけなのに先生がなかなか来ない。早く先生来てよ、お腹が空いたよ。

机に頭をつけ、うな垂れている私を芽衣が慰めるように頭を撫でてくれる。芽衣の手の温もりが気持ちいい。この小さな手を、握り返したいけどみんながいるからできない。


この前、ベッドの上で芽衣と恋人握りをしながらキスをして首にもキスをして、、シャツの前を開け…やっば、思い出しただけで体の熱が上がる。素晴らしい眺めだった。



「あっ、水希。明日さ、部活が終わったあと軽音部来てよ」


「明日は無理、用事がある」


「えー」


「ごんちゃん、今度ね」



軽音部に行きたくない。修学旅行の件でコラボから逃げられないけど、もう少し時間をおいて欲しい。人前で歌うのしんどすぎる…。

せめて、芽衣のためだけに歌うのだったら我慢できるのに。へへ、キザだね。


今日はごんちゃんに私と芽衣の関係を言うと決め朝からドキドキしている。やっとテストが終わり、どのように伝えようか悩んでいる。反応が怖いけど、芽衣のために頑張らないといけない。



「ごんちゃん、この後さ…話したいことがあるから時間頂戴」


「いいよー。何かあるの?」


「まぁね」



私がごんちゃんに話があると言うと隣にいる芽衣の緊張が伝わってきた。芽衣もドキドキするよね。私もドキドキが止まらない。

私達のことを伝えたら、ごんちゃんはどう思うかな…昨日、色んなことを考えた。


・何でなの?

・水希と芽衣は女の子が好きなの?

・男の子は好きじゃないの?

・バレたら怖くない?

・気持ち悪い…


ずっと負の考えしか思いつかなくて辛かった。悲しい、良い方向に考えられない。

ごんちゃんとは入学当初から気があって仲良くなった。芽衣と3人で話すようになって…だからこそ怖い。友達のごんちゃんを失いたくないから。


お姉ちゃんや恭子先輩、さわちん・ひかるは私と芽衣の馴れ初めを知っている。だから、付き合い始めてすぐに報告した。

でも、何も知らないごんちゃんに伝えることは決断がいる。同性同士の恋に偏見があるかもしれないから不安になる。



「水希、軽音部とのコラボ忘れないでねー」


「忘れてないって!思い出す度に胃が痛い」


「ファンにサービスだよ」


「私にファンなんていない」


「この頑固者」



考えただけで胃が痛くなる軽音部とのコラボ。明日、軽音部に来て欲しいの意味はきっとコラボのことだろう。用事があって良かったよ…行きたくないから。



「あっ、先生が来た」


「やっとだー」



ドキドキしてきた。ごんちゃんにどうやって切り出そう。いきなり、芽衣と付き合っているって言われても戸惑うだけだし。

難しい、最初の言葉が思いつかない。さりげなく、芽衣との交際を本気だと分かってもらえるようにしないと。


多分、最初は「冗談でしょ〜」って言われそうだし…ごんちゃんの立場だったら、私だってそう切り返す。

恋って何だろうね。何で隠さないといけない恋があるのだろう。本気の恋なのに…もっと堂々としたいよ。


私が弱いのか、世間が怖いのか、、怖いものがありすぎて私を弱気にさせる。でも、今日…ごんちゃんに私と芽衣の関係を言えたら、ごんちゃんに受け入れられたら変われる気がする。だからこそ頑張らないと。







「嘘でしょ…?」



私達がごんちゃんに交際のことを伝えて、ごんちゃんが最初に発した言葉。もっと明るい言葉を少しだけ期待していた。

せめて、冗談っぽく言ってくれたら…ここまで心が沈むことはなかったのに。ごんちゃんの言い方は体で体現するなら後ろに二歩下がった言い方だった。


お姉ちゃんに言われていた。みんながみんな受け入れてくれる人ばかりではない。だから、あんまり私と芽衣の関係を言ってはダメだよと。

馬鹿だよ…ごんちゃんならって、、お姉ちゃんも恭子先輩もひかるもさわちんも受け入れてくれたから、きっとごんちゃんもって勝手に思っていた。



もう時間は戻せない。私は芽衣を背中に隠した。多分、このままだと泣いちゃうと思ったからだ。私も涙を堪えている。

HRが終わり、ドキドキしながら3人で生徒会室に来て、必死に考えて緊張しながら芽衣と付き合っていることを伝えた。


でも、私達が欲しかった言葉は聞けなかった。私達の交際が本気だと分かると黙り込んでしまったごんちゃんに釣られ、私達も黙り込み時が止まったみたいに静かになった。

恋って自由にするものじゃないの?何で、同性を好きになっただけで、簡単に受け入れてくれないの?


もし、私に彼氏が出来たら簡単に受け入れ「おめでとう〜」って言ってくれるでしょ。

それと一緒だよ。私は芽衣が好きで、芽衣も私が好きでやっと実った恋なんだ。

本気の恋なんだ…男とか女とか関係ない!恋は心でするもので、心から好きになったらそれが最上の恋だ。

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